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【有本香の以毒制毒】「仁徳天皇陵」の世界遺産登録は朗報か 大切にすべきは「遺物」のみではなくヒストリー、ユネスコとの関係も見直すべき

 ユネスコ(国連教育科学文化機関)の諮問機関が13日、日本最大の前方後円墳「仁徳天皇陵古墳」(大山古墳、堺市)を含む大阪府南部の「百舌鳥・古市(もず・ふるいち)古墳群」を世界文化遺産に登録するよう勧告した。正式には、6月30日から7月10日、アゼルバイジャンの首都、バクーで開かれるユネスコ世界遺産委員会で決まる見通しだという。

 令和に入って最初の世界遺産登録ということもあり、2007年から登録を目指す活動に取り組んできた地元からは喜びの声が聞かれた。

 だが、このニュースに筆者は複雑な心境である。喜ぶ地元の方々に水を差すわけではないが、正直なところ、今回の登録には抵抗感すらある。報道では、「天皇や皇族が葬られた陵墓が世界遺産になるのは初めて」などとサラリと言うが、これは果たしてありがたがることなのだろうか。

 登録予定の墳墓群は、いまも続く皇室の祖先のお墓である。すでに滅んだ王朝関係者の墳墓、例えば、エジプトのピラミッドや、中国の秦始皇帝陵とはまったく違う。あえて言えば、「お宅のご先祖のお墓、世界遺産にしますよ」と外国の機関からいわれて、うれしいのかという話なのである。

 余談だが、仁徳天皇の「民のかまど」の逸話はとても良い話なので、この際、紹介しよう。

 仁徳天皇がある日、御所から集落を眺め、家々のかまどから立ち上る煙が少ないことに気づいた。「これは民の暮らし向きが苦しいせいだ」と悟り、税を取るのをしばらくやめさせる。税収がなかったため、天皇の住む御所はボロボロの状態に陥ったが、それでも天皇は課税しなかった。

 やがて景気が回復すると、御所の様子を見るに見かねた民が「ぜひ、修繕させてほしい」と押しかけたという。

 どことなく、いまの消費税増税延期の件とオーバーラップする話だが、それはさておき、逸話からは、日本における天皇と民の特殊な関係性が読み取れる。

 わが国では、古代においてさえ、天皇と民が「絶対君主と虐げられた民衆」という関係ではなかったとみられる。これは、約2000年間、1つの王朝が続いていることに加えて、世界に類を見ない、まさに奇跡である。

 いまを生きる私たちが大切にすべきは、古墳という「遺物」のみではなく、それにまつわる私たち自身のヒストリーである。外国の機関からお墨付きをもらわなければ、その大切さを認識できないほど、私たちは愚かではないはずだ。

 史跡や自然環境の保全において、世界遺産登録がこれまで効果を発揮してきたことは確かだ。しかし、一方で近年、世界遺産登録が、観光客を呼び込むための「金看板」のごときものとなり、むしろ周辺環境の悪化を招いた例がある実情も重い。

 しかも、ユネスコといえば、15年には、中国が申請した「南京大虐殺文書」を記憶遺産に登録した組織でもある。わが国にとっては自国の歴史を歪められる、最悪の活動を助ける機関とすらなっている存在でもある。

 いまむしろ「世界遺産バンザイ」の安直な姿勢を見直し、ユネスコとの関係をも見直すべきだ。日本政府、とくに文部科学省に強く申し上げたい。

 ■有本香(ありもと・かおり) ジャーナリスト。1962年、奈良市生まれ。東京外国語大学卒業。旅行雑誌の編集長や企業広報を経て独立。国際関係や、日本の政治をテーマに取材・執筆活動を行う。著書・共著に『中国の「日本買収」計画』(ワック)、『リベラルの中国認識が日本を滅ぼす』(産経新聞出版)、『「小池劇場」の真実』(幻冬舎文庫)、『「日本国紀」の副読本 学校が教えない日本史』(産経新聞出版)など多数。

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