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米中貿易戦争、中国が譲歩できないワケ 長期化で体制崩壊の恐れも

 米中貿易戦争では、中国側が知的財産の保護などをめぐり、合意を覆したと指摘されている。習近平政権側が譲歩できない背景はなにか。米国との交渉で今後、どこまで譲歩することがありうるのか。

 結論からいえば、当分の間、米中間で譲歩することはなかなか考えにくい。

 本コラムで繰り返してきたが、米中貿易戦争は貿易赤字減らしという単なる経済問題ではなく、背景には米国が軍事覇権のために技術優位を維持しようとする戦略がある。

 米国が問題視している中国の行為とは、その国家体制に由来するもので、(1)知的財産の収奪(2)強制的技術移転(3)貿易歪曲(わいきょく)的な産業補助金(4)国有企業によって創り出される歪曲化及び過剰生産を含む不公正な貿易慣行-を指す。

 これらは、米交渉担当者がこれまで対中戦略として語ってきたもので、昨年9月の日米共同声明にも、中国とは名指しされていないが盛り込まれている。

 こうした米国のスタンスは、議会では与野党を問わず支持されている。それもあり、トランプ大統領は、自身の再選戦略でも中国が有効なカードだと考えているのだろう。

 米大統領選は来年11月だ。中国への厳しい姿勢はトランプ氏に有利に働いている。支持率は、大統領就任後下がっておらず、現時点で45%程度と、歴代大統領の再選時に比べても遜色のない高い数字を維持しているからだ。

 今回、強制的技術移転と貿易歪曲的な産業補助金について、米国は中国に法制化を持ちかけたが、土壇場で中国が拒否したようだ。

 中国が拒否したことについて、面子(メンツ)を重視したという説明もあるが、それだけではない。これを拒否しなければ、社会主義体制が維持できないという側面も大きいはずだ。1党独裁体制の下で進められた政策を放棄することは、体制否定にもなりかねない。

 これは、中国国内の政治構造にも大きく関係する。中国は広大な国土なので、中央と地方の関係は微妙である。

 これまで経済発展のためには、ある程度、地方分権を容認せざるを得なかったが、習近平体制になってから、逆に中央集権化の流れを加速している。

 強制的技術移転と貿易歪曲的な産業補助金については、中央政府とともに地方政府もこれまで推進してきた。それを米国の意向だからといって、習氏が規制を認めると、地方政府からの突き上げをくらう可能性が高いため、絶対に認められないはずだ。

 一方で、今回の中国側の報復関税も予定どおりのものだったが、米中の貿易の格差や、中国の対米輸出が代替可能品ばかりであることを考えると、この報復合戦は明らかに中国に分が悪い。それでも、中国は「wait and see(当面注視)」と言わざるを得ない。

 このままの状態が続けば、トランプ氏の行動をきっかけに、中国の体制崩壊まで持っていくようなこともありうるかもしれない。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

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