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「絶対王者の時代」から大混戦へ様変わりした名人戦

★名人戦(1)

 「名人」の称号は、1612年に徳川家康公が初代大橋宗桂に、家元としての名人を認め、50石の扶持を与えた時から始まる。

 江戸~大正時代の名人は世襲制で、江戸期は大橋本家、大橋分家、伊藤家からしか輩出されなかった。

 その世襲制を改め、実力で名人を決める制度に改革したのが、関根金次郎13世名人だった。自身が先代の小野五平12世名人の長生きにより、名人に就くのが遅くなり過ぎたことも、改革の要因だったと言われている。

 1937年、実力制第1期名人には、木村義雄14世名人が就き、戦争を挟んで通算8期、獲得した。

 木村の次は大山康晴15世名人が18期。大山を破った中原誠16世名人が15期と、絶対王者が名人となる時代が続いた。

 永世名人の資格は通算5期と、タイトル戦では比較的短いが、A級に上らないと挑戦者になれないだけに、永世資格者は400年で19人、実力制になってからでも6人しかいない。

 平成時代には、14年にわたって森内俊之九段と羽生善治九段で名人を持ち合った時もあるが、現在の佐藤天彦名人が出現してからは、名人戦も大きく様変わりした感がある。

 佐藤は羽生から名人を奪い、昨年も羽生の挑戦を退けて、名人在位は3期となった。絶対王者だった羽生も、容易にタイトル戦で勝てない時代となり、30代がタイトル戦の常連となっている。

 今期の挑戦者は、昨年あと一歩のところで挑戦権を逃した、豊島将之二冠。この1年の間に棋聖、王位の二冠を獲得し、満を持しての挑戦である。

 最近のタイトル戦が昔と違うのは、以前は王者に対して挑戦者がどこまで迫れるかの勝負で、言うならば上手と下手がハッキリしていたのが、最近はどちらが格上かわからないタイトル戦が増えたことだ。

 今期の名人戦も、3期連続名人の佐藤は大名人の貫禄が出てきたが、豊島の実績も引けを取っていない。

 それを証明するかのように、今期は挑戦者の豊島がいきなり3連勝し、早くも名人をカド番に追い込んでいる。

 今期の戦いの模様は次回で。

 ■青野照市(あおの・てるいち) 1953年1月31日、静岡県焼津市生まれ。68年に4級で故廣津久雄九段門下に入る。74年に四段に昇段し、プロ棋士となる。94年に九段。A級通算11期。これまでに勝率第一位賞や連勝賞、升田幸三賞を獲得。将棋の国際普及にも努め、2011年に外務大臣表彰を受けた。13年から17年2月まで、日本将棋連盟専務理事を務めた。

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