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貿易戦争で米への反発避ける中国 国務院OB「反発してるのはネットのバカだけ」

 「中国での反発? それほど深刻なものじゃないですよ。だって、劉鶴(副首相)に弾がないのは、誰もが知っていることですから。習近平主席の国内での指導力に影響? もっと関係ない。アメリカに反発しているのは、状況を知らないネットのバカたちだけなんですから」

 国務院OB氏はこういって苦笑する。

 いまはひたすら「忍耐」と「低姿勢」で乗り切るしかない、ということなのだ。

 トランプ大統領が今月上旬、2000億ドル分の中国製品に対し関税を10%から25%に引き上げるという新たな対中制裁関税の引き上げを発表したことを受け、中国は商務部や人民銀行を通じてさまざまな経済統計を発表。「外部の不安定要因が下振れ圧力になっているものの、中国経済は堅調に推移している」ことを強調した。

 だが、実情はそれほど楽観できるものではないようだ。

 「米中の問題がどこまで長引くのか、どこに決着するのか。それがはっきりしないと、思い切った投資ができない。需要の見通しが立てられないからね」と昨夏まで広東省東莞市で工場を稼働させていた経営者は嘆く。

 関税引き上げの悪影響がアメリカ経済に及ぼす影響もいまのところ限定的で、農産物も国が買い取り、農家の痛みを和らげている。

 この問題で中国は、当初から対立を決定的にすることを避ける姿勢に徹してきた。この戦いで分が悪いことをきちんと認識してきたからである。

 相互確証経済破壊という言葉があるように、やり過ぎれば米中双方が世界を巻き込んで互いに消耗するだけだ。それが分かっているだけに双方がレッドラインを設け、ギリギリの交渉を行ってきた。

 5カ月間の閣僚級協議で中国は、知的財産権の保護や産業補助金削減、為替政策の透明化などで協定文を作成することに合意していたが、5月に唐突に内容の見直しを要請してきたという。

 ひっかかった問題は国有企業への党の関与へのクレームだ。これは社会主義国や途上国と経済協定を進める際に必ず乗り上げる暗礁だ。文化摩擦でもある。

 TPP加盟に際し、ベトナムやマレーシアが反発したのと同じだが、中国の場合にはここにもう一つのややこしい問題がからむ。

 地方を統治しきれない中央の悩みである。

 言論統制し、規律検査で官僚を震え上がらせ、個人崇拝にも近い独裁ぶりが伝えられる中国で何を言っているのか、と言われそうだが、実態はそうなのである。

 地方には地方の権力があり、それと対立関係に陥れば国の運営は困難を極める。これは国有企業も同じなのである。

 この問題は簡単に外国と約束しても、実態として「できていない」という事態に陥ることは目に見えている。アヘン戦争に敗れて自由貿易を認めながら、不十分だったために起きた「アロー号事件」の再現だ。

 やるという意思はもっているが、約束はできない。これも習政権の本音だろう。

 ■富坂聰(とみさか・さとし) 拓殖大学海外事情研究所教授。1964年生まれ。北京大学中文系に留学したのち、週刊誌記者などを経てジャーナリストとして活動。中国の政・官・財界に豊富な人脈を持つ。『中国人民解放軍の内幕』(文春新書)など著書多数。近著に『中国は腹の底で日本をどう思っているのか』(PHP新書)。

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