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【有本香の以毒制毒】幻冬舎・見城社長のツイッター炎上…なぜ実売部数公表に大騒ぎするのか? 社説にまで取り上げた毎日新聞、書かれない背景

 先週来、身近なところで奇妙な「炎上」が起きていた。出版社「幻冬舎」の見城徹社長が自身のツイッターで、ある人(=本稿ではT氏とする)の著書の実売部数を公表したことで批判を浴びた一件である。見城氏は当該ツイートを削除し、謝罪した。

 業界界隈(かいわい)の一部の人たちが大騒ぎした一方で、世間の人々からは「書籍の実売部数公表のどこが問題か分からない」という疑問の声が挙がった。

 問題視された理由の1つは、出版業界の因習による。通常、出版社と著者の間で「部数」といえば印刷部数を指し、それにより著者への印税額も決まる。印刷された自著が、実際何部売れたかには、関心すら持たない著者が少なくない。出版社側も、著者への気遣いから実売数を口にしない

 そんな狭くてユルい業界の「コップの中の嵐」を、全国紙・毎日新聞が22日、社説でまで取り上げた。

 社説は、作家にとってセンシティブな実売部数を、《了解なく公表するのは、高圧的で作家への敬意に欠けると言われても仕方がない》と見城氏を責める。

 確かに、著者に断りなく公表したことは配慮に欠けていた。

 だが、重要なのは、この前段である。なぜ、見城氏がそんなことをしたのかの部分だ。社説にはこうある。

 《Tさんは、同社から刊行された百田尚樹さんのベストセラー「日本国紀」について、「コピペに満ちた自国礼賛本」などと批判していた。それが原因で、同社から刊行予定だった文庫本の出版が取りやめになったと訴えていた》

 T氏の言葉を借りて、サラリと『日本国紀』を貶める嫌らしさ。同時に、このくだり全体が、T氏側の視点のみで書かれていて、甚だ公平性に欠ける。

 実は、昨年11月の発売以来、T氏はツイッター上で連日、日に何度も『日本国紀』の「悪口」を書き込んでいた。ときには、一般読者にも日本国紀の「悪口」で絡んだ執拗(しつよう)さに、たまりかねたのが版元の幻冬舎だ。「少し控えてほしい」と担当者が頼んだが折り合わなかったという。

 毎日の社説では、この経緯も幻冬舎側の事情も一切書かれていない。社説を読むと、幻冬舎は「言論弾圧」を行うような横暴な会社で、『日本国紀』のようなベストセラーばかり大事にする会社のように感じられる。

 見城氏のツイートは、この経緯を説明し直し、自社の担当が懸命にT氏を支えてきたことを知らせたい一心からのものだった。そのなかで、実売部数が芳しくなかったことにも触れた。揶揄(やゆ)したわけではない。

 見城氏の部数公表の後、毎日の社説とは対照的に、同じ版元の稼ぎ頭の作品を執拗に腐すT氏の行動に疑問や批判の声も挙がった。

 社説は最後に、出版不況の現状に触れ、唐突に《言論が右傾化するなかヘイト本がベストセラー化し、売れるとなれば次々と出版される…》と無茶な分析をしている。

 さらに、出版社には利益の追求だけでなく、言論の多様性を担保する役割もあるといい、《売れているかどうかだけで本や作家を評価する風潮が広がれば、さらに出版の先細りを招く》と説教を垂れて終わる。

 この日の社説でさえ、T氏の言い分に偏って書く新聞が唱える「多様性」とは、一体どんなものか。その多様性を旨とする同紙の部数は近年下がり続けているが、先細り対策は、どうなっているのか。

 論理的な解説を求めたいところである。

 ■有本香(ありもと・かおり) ジャーナリスト。1962年、奈良市生まれ。東京外国語大学卒業。旅行雑誌の編集長や企業広報を経て独立。国際関係や、日本の政治をテーマに取材・執筆活動を行う。著書・共著に『中国の「日本買収」計画』(ワック)、『リベラルの中国認識が日本を滅ぼす』(産経新聞出版)、『「小池劇場」の真実』(幻冬舎文庫)、『「日本国紀」の副読本 学校が教えない日本史』(産経新聞出版)など多数。

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