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プレートの沈み込みが始まり…大西洋がなくなる!? 解明できない1755年「リスボン大地震」

 プレート・テクトニクスでは説明のつかない地震が世界でいくつか知られている。

 1755年にポルトガルのリスボンの沖に起きたリスボン大地震もその仲間だ。マグニチュード(M)8・5~9・0の巨大地震で、大津波が首都リスボンを襲った。震源はリスボンの南西約250キロの海底だった。

 地震の揺れや地割れによる被害に加えて、40分後に襲ってきた大津波が市街地を呑み込んで被害を拡げ、さらに火事が燃え広がって、ほとんどの建物が廃墟になった。約6万人もの死者を生んだ欧州史上最大の自然災害だった。

 ポルトガルは多くの教会を援助し、海外植民地にキリスト教を宣教してきた。その首都リスボンが、万聖節というカトリックの祭日に地震に襲われてしまったのだ。

 当時、地震とは自然現象というよりも神罰だと考えられていた。しかし、なぜ祭日に地震に襲われて多くの聖堂もろとも町が破壊され、悪人だけではなくて善人も子供も、みんな死ななければならなかったのか。当時の神学者や哲学者は途方に暮れた。

 この地震は欧州の政治や経済だけではなくて、哲学や思想にまで大きな影響を及ぼした。地震の衝撃はヨーロッパの精神にも及んだのである。

 じつは、この地震がなぜ起きたのかは、現代でも解けないナゾなのだ。

 1969年になって、近くでまた地震が起きた。M7・8の大地震で、津波が起きて13人が死亡したほか、多くの負傷者を生んだ。同年に起きた世界最大の地震だったが、1755年の地震よりも小さかった。

 ここはプレート・テクトニクスから見ると地震が起きそうもないところなのだ。大西洋の「ホースシュー深海平原」というところだ。なんの変哲もない水深4800メートルの海底の大平原が拡がっている場所である。

 日本で巨大な地震を起こすのは、大陸プレートが海洋プレートと衝突して海洋プレートが地球の中に沈み込んでいる海溝(かいこう)である。ところが、この深海平原には、海溝はない。

 最近の研究で、この平らな平原の地下には、まわりよりも密度が高い物質が隠れていることが分かった。これは海洋プレートが深いところで変質したものだと考えられている。つまり、まわりより重いこの部分が、いずれ沈み込んでプレートの衝突が起きるという学説が出された。

 この学説が正しければ、世界で初めて、目の前でプレートの沈み込みが始まろうとしているのだ。1755年や1969年の地震は、その始まりを示しているのである。沈み込みが起きれば、大西洋は小さくなる。

 地球が生まれてから46億年、その間に少なくとも3回は大陸同士が集まって巨大な超大陸を作り、その後、分裂していったことが分かっている。今回ポルトガル沖で見つかった「始まり」が、大西洋がなくなるという将来の大事件につながるものかもしれない。

 ■島村英紀(しまむら・ひでき) 武蔵野学院大学特任教授。1941年、東京都出身。東大理学部卒、東大大学院修了。北海道大教授、北大地震火山研究観測センター長、国立極地研究所所長などを歴任。著書多数。最新刊に『多発する人造地震-人間が引き起こす地震』(花伝社)。

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