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地球にない仕組み「木星の月」の火山活動

 6月は木星を詳しく観察できる数少ない機会だ。それは「衝(しょう)」という現象で、木星が地球にいちばん近づくだけではなくて、地球から見て太陽とちょうど反対側になるからだ。6月には太陽が沈むころ東の空から昇って、太陽が昇るころ西の空に沈むので、一晩中見ることができる。

 明るさもマイナス2・9等級の明るさになる。遠くにあるときにはマイナス1・6等級だから、ずっと明るい。恒星でいちばん明るいシリウスよりも明るくなるのである。

 しかも、6月16日の夕方から翌17日の明け方には月と木星が大接近して見えるから、視野の狭い双眼鏡でも同じ視野に入る。そのうえ、14日から19日には、月と木星と土星が並んで見られる。

 双眼鏡や小型望遠鏡でも6月には木星特有の縞が見えるだろう。木星は岩石質の中心核を厚い水素の層が覆っているガスを主成分とする惑星だから地表が見えず、雲しか見られない。だがそこに特有の縞がある。

 木星には「月」が79個もある。そのうち大きな4つは6月には双眼鏡でも見える、これらは17世紀の天文学者ガリレオ・ガリレイが発見したことから「ガリレオ衛星」と呼ばれている大きな「月」だ。なお、79個のうち54個は木星の自転方向とは逆の軌道を持つ逆行衛星だ。つまり地球から見える月とは反対方向に回っている。

 ガリレオが発見した衛星のうち「イオ」は月の1・05倍の大きさ、つまり月とほとんど同じ大きさである。

 イオは昔は月と同じように「死んだ星」だと思われていた。

 だが、1979年になって探査機の撮った画像から火山活動があることが分かった。

 高さ500キロにもなる巨大な火山プリューム(上昇流)が写っていた。地球にはない大きさだ。火山の数は知られているだけで150以上、たぶん400以上あると思われている。

 しかし、この火山の「原動力」は地球のようなプレート・テクトニクスではない。そのかわり、イオには木星の潮汐(海面の昇降現象)による変形がイオの内部に「潮汐熱」を生み出している。

 そもそも木星は太陽系の惑星ではもっとも巨大で、重さは太陽系の木星以外の惑星全てを合わせたものの2・5倍もある。地球の300倍以上だ。このために引力も大きいのである。

 木星を回っているイオは、木星に近い側と遠い側で木星による引力の大きさに違いが生じ、潮汐によって100メートルもの変形が生まれる。この変形が内部に潮汐熱を生み出しているのだ。ちなみに地球は潮汐で25センチほどしか変形しない。

 つまりイオの潮汐熱とは地球にはない火山のメカニズムである。火山の大きさもエベレストを倍も超える巨大なものだ。

 地球をさしおいて、太陽系で一番地学的に活発な天体が木星のまわりを回っているのである。

 ■島村英紀(しまむら・ひでき) 武蔵野学院大学特任教授。1941年、東京都出身。東大理学部卒、東大大学院修了。北海道大教授、北大地震火山研究観測センター長、国立極地研究所所長などを歴任。著書多数。最新刊に『多発する人造地震-人間が引き起こす地震』(花伝社)。

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