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「ギャンブルの陰に女あり」あの回遊魚たちは今… 「世界遺産」が彼女たちを消した

★変化を続けるマカオ(5)

 「犯罪の陰に女あり」というが、実は「ギャンブルの陰にも女あり」で、世界各地、カジノがある場所には売春婦がいるのが通例だ。日本では、この手の話にすぐ目くじらを立てる人がいるが、大の大人がやることに他人がとやかく口を出すべきではないというのが諸外国の考え方だ。ただし行政としては性病の蔓延(まんえん)を防がなくてはならないので、例えばヨーロッパでは、ベルギーに代表されるような「公娼」(=公営の風俗店)を設けている国もある。

 近年の五輪では選手団にコンドームを支給するようになったが、それも同じ考え方によるものだ。ちなみに平昌五輪では過去最大の11万個が選手団に支給された。選手1人あたり約37個という計算になるそうで、苛酷な試合の合間にそれだけの量を使い切るとしたら、さすが世界レベルの体力といえるが、そんなことに感動している場合ではない。

 話を戻すと、マカオにも以前は売春婦が大勢いた。例えばカジノ「L」の回廊では派手な服装の売春婦がぐるぐると歩き回り、そのイメージから「回遊魚」と言われていた。同じフロアにはドッグレースの投票券売場があり、そこに立つ男たちはドッグレースを見るフリをして彼女らを物色していた=写真右。

 売春婦らはギャンブラーに猫のようにまとわりついた。あぶく銭を手にした男が客になりやすいのは事実だが、ギャンブラー以外は相手にしないのかといえば、そういうわけでもなかった。

 旧市街にはホテル全体が実質的にいわゆる売春宿となっているものもあった。ロビーに若い女性がたむろし、それをガラス越しに物色する男たちは、マカオでよく見る光景だった。

 暗い夜道を歩いていると売春婦から声をかけられることもあった。写真左は、ぼくが旧市街を散策しているところに売春婦がやってきて、しつこく誘われたときのものだ。彼女は日本でも働いたことがあるそうで、ぼくが客にならないとわかった後、ビールをおごる代わりにマカオでの「お仕事」について話してくれた。

 彼女によれば日本人男性は優良客としてかなり人気があるとのことだった。優しいし、乱暴なことはしないし、サービス料を踏み倒すこともしないからだという。

 意外な分野で日本人男性の評価が高かったわけだが、喜びもつかの間、彼女から、日本人男性に伝えてほしいことがあるといわれた。

 一体何かと思いきや、サービス料は全部終わった後に払えということだった。売春婦の中には、先にお金をもらっておきながら、終わった後になってまだもらってないと言い出し、二重取りしようとする輩もいるからだそうだ。そんな時、日本人男性はおじけづき、つい払ってしまうというのだ。

 だが、そんな話も今となっては昔のもの。マカオでは彼女らの姿が次第に見られなくなってきたからだ。それもこの街に起きた変化の一つ。その大きなきっかけといえるのが、世界遺産に登録されたことだ。押し寄せる観光客を当て込み、古くて怪しかった宿が次々と観光客用のホテルにリニューアルされ、彼女らの居場所がなくなったのだ。(作家・松井政就)

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