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【吉田茂という反省】吉田茂が日本に残した大きな「負の遺産」 過ちを清算して憲法改正を

★(5)

 吉田茂は、日本に大きな「負の遺産」を残して日本は現在もあえいでいるのであるが、これからはどうすればよいのだろうか。それには何といっても憲法改正だ。

 前回にも記したことだが、占領軍の押し付けた憲法は、いわゆる芦田修正によって、自衛戦争に限り、日本は戦力も交戦権も保持できるようになった。つまり第9条第2項で「前項の目的を達するため」が入り、それが第1項の「国際紛争を解決する手段としての戦争」を指すのだとすれば、確かに自衛戦争のためには戦力も交戦権も保持できるのである。それで占領軍は、その修正を認めたのである。

 吉田はこの押し付け憲法の本当の解釈はこの通りだということを十分に知りながら、日本はあらゆる意味において戦力も交戦権も保持できないという制定時の日本政府の解釈を変えなかった。

 それでいて、警察予備隊という軍隊ではないけれど事実上の戦力を創設し、それが発展して自衛隊となり、今日では自衛隊は世界有数の戦力を蓄えた組織となっている。

 しかし、日本政府の公式見解では、自衛隊は戦力ではなく、交戦権もないとしている。自衛隊が戦力でないならば、世界のほとんどの国の軍隊は、戦力において自衛隊より確実に劣るから、軍隊ではないことになる。

 交戦権についても、侵略してくる外国軍隊に対して自衛権行使として戦闘しなければならないのに、それを「交戦権の行使ではない」と言い張る。正当防衛で人を殺すとき、それは殺人であるに違いないのに、「これは殺人ではない。短刀を心臓めがけて体内に挿入しているだけである」と説明しているようなものだ。

 結局は、吉田が警察予備隊を創設するとき、憲法の解釈を占領軍の押し付け憲法どおりに本来の解釈に戻すか、そうでなければ憲法改正をしておくべきだったのである。

 現在、安倍晋三首相の下で、解釈はこれまでどおりにして、第9条の第3項に自衛隊を明記して自衛隊の名誉を顕彰しようという改正案が考えられている。

 私は率直に言って、この改正案は実現しないと思う。たとえ国会に上程し国会では通ったとしても、このような馬鹿げた解釈を維持したままでは国民の過半数の支持は得られないと思う。

 まずは、第2項の解釈を押し付け憲法本来のものに戻し、「自衛隊は戦力であり、交戦権を保持している」ということをはっきりさせたうえでならば、第3項自衛隊明記の改正案はだれにとっても反対する理由がなくなっているから、改正は成功すると思う。

 つまり、憲法について吉田の犯した過ちを清算して、憲法改正に取りかかれば成功するということだ。(敬称略)=おわり

 ■杉原誠四郎(すぎはら・せいしろう) 教育研究家、日本近現代史研究家。1941年、広島県生まれ。東京大学大学院教育学研究科修士課程修了。城西大学教授、武蔵野大学教授を務めた。新しい歴史教科書をつくる会顧問。著書・共著に『外務省の罪を問う』『保守の使命』『吉田茂という反省-憲法改正をしても、吉田茂の反省がなければ何も変わらない』(いずれも自由社)など多数。

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