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【国難突破】米中戦争の「長期的展望」と日本の「立ち位置」 わが国が生き延びる道は…

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 大阪でのG20(20カ国・地域)首脳会合も目前となり、最大の懸案だった、ドナルド・トランプ米大統領と、中国の習近平国家主席との首脳会談開催が決まった。専門家の間では、それぞれの妥協可能なポイントについて、さまざまな議論がなされている。

 しかしここでは、長期的展望を考えてみたい。

 トランプ氏は昨年3月、中国が長年続けてきた不公平な取引慣行や、知的財産権と技術の窃盗をこれ以上容認しないとして、関税などの対中制裁措置の大統領令に署名した。

 中国も強硬姿勢を崩していない。中国は米国債の最大保有国だが、報復のために売却すれば自身の外貨準備も目減りする。中国が米大企業を標的に報復措置を取れば、中国人の雇用に深刻な影響が出る。米中は相互依存が進んでおり、現状では、中国が米国に本格的に反撃するのは難しい。

 しかし、長期的に考えればどうか。

 宇宙開発においては、中国の無人探査機「嫦娥(じょうが)4号」が今年1月、世界で初めて月の裏側に着陸し、探索に成功した。スーパーコンピューターの開発も、日米独占は終わり、中国の優位が確立した。大気汚染、水質汚染も劇的な改善が進んでいる。

 日本人技術者が、日本政府や日本企業に正当に評価されず、中国で重用される例も枚挙にいとまがない。中国の富裕層である共産党党員は8900万人を突破した。2015年から16年の学期だけでも、約33万人の中国人が米国の高等教育機関に在籍している。中国人の士気は極めて高い。

 もはや中国は、日米の技術を窃盗し、市場ルールをねじ曲げずとも、米国以上の国力に到達することは、十分可能な圏内に入ったのではないか。

 そうだとすれば、米国と今、熾烈に争っているのは、中国人共同体としての中国国家ではなく、中国共産党でさえなく、実は習近平政権だけなのではないか。習政権が、自らの政権基盤の不安定さを克服するために、社会信用システムの導入などの「危険な独裁」を強化しつつ、米国との「拙速な競争」に暴走しているだけなのではないか。

 逆に言えば、中国そのものにとっては、もはや「米中戦争の長期的勝利」の見込みは立ちつつあるのではないか。もちろん、全面勝利である必要はない。共存しながら世界の主導権を米中で二分するか、中国側がより優位に立てればいい。

 もしこれが現実ならば、米中戦争は論評の対象ではなく、その中で、「私たち自身の立ち位置をどうすべきか」という死活的テーマということになる。

 私見は次の通りだ。

 日本は自らの国力を最大化しつつ、劣位を取りつつある米国と事実上連合化し、中国による「技術と独裁の結託」の防衛ラインとなる、その道しかない。

 日本が、技術・経済大国へ自己再建するか否かは、自由主義圏を守れるかどうかの砦(とりで)だ。世界史的な視野に立てば、そのほかに、わが国が生き延びる道はないと私は思う。

 ■小川榮太郎(おがわ・えいたろう) 文芸評論家。1967年、東京都生まれ。大阪大学文学部卒。埼玉大学大学院修了。国語や文学の衰退など日本人の精神喪失に対して警鐘を鳴らす。一般社団法人「日本平和学研究所」理事長を務める。第18回正論新風賞を受賞。著書に『徹底検証 安倍政権の功罪』(悟空出版)、『左巻き諸君へ! 真正保守の反論』(飛鳥新社)、『平成記』(青林堂)など多数。

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