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日露開戦の年に詠まれた世界平和への願い

 いよいよ6月28、29日に「G20大阪サミット首脳会合」が開催されます。日本に集結する世界のさまざまな国の首脳たちを、明治天皇はどのような感慨をもって天から見守っているのでしょうか。

 掲出歌には、「正述心緒(せいじゅつしんちょ)」という言葉が添えられています。これは、「心に思うことを直接に表現すること」を意味する『万葉集』に用例のある言葉です。

 「令和」の出典となったことでも注目されている『万葉集』。先月国賓として来日した際には、あのトランプ大統領もスピーチの中で『万葉集』について語る場面がありました。

 掲出歌の「はらから」という言葉も、実は「兄弟」を意味する『万葉集』に用例のある表現です。「四方の海に囲まれた国々は皆、兄弟である「同胞」なのに、どうしてこんなにも騒乱や戦争がおきてしまうのか」という歌意です。

 『論語』に「君子は敬して失ふことなく、人と恭(うやうや)しくして礼有らば、四海の内、皆兄弟なり」(君子は慎み深く、決して過失のないようにし、他者とていねいに礼儀正しく接すれば、世界中の人々が皆兄弟となる)という孔子の言葉がありますが、明治天皇もこの言葉をご存知だったのでしょう。

 掲出歌が詠まれたのは日露戦争の開戦の年でした。当時、欧米諸国によるアジアへの侵略がおこなわれていた時代です。「どの海も同じ星に生かされ、育まれている。争いは同じ体の中で臓器同士が争っていることに等しいのではないか」

 --明治天皇のそんな嘆きが聞こえてくるかのようです。

 この御製に込められた世界平和への思いに、当時のアメリカ合衆国大統領ルーズベルトも感銘を受けたと語り継がれています。

 今回、G20に集結する世界の首脳にもぜひ明治天皇の御製や心願に接してほしいと思います。昭和16(1941)年9月、対英米蘭の開戦を決定する御前会議がおこなわれた際、慣例を破って、昭和天皇は二度、明治天皇のこの御製を朗誦されたそうです。世界平和を願う御歴代の祈りは令和の時代となった今でも、脈々と受け継がれているのではないでしょうか。(歌人、作家・田中章義)

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