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人生の意味とは? 高齢者の孤独

 ドブラヴィーチェル、親愛なる日本の皆様!

 病院に診察にくる患者のほとんどは高齢者です。彼らは頻繁に医師に心を開き、自分たちの生活について、いろいろ伝えたいと思っています。

 しかし、毎日何十人もの患者を診察しなければならない医師たちには、患者の話に耳を傾ける時間はあまりありません。私は、その場で彼ら高齢者の孤独を感じる時があります。

 先日、眼科センターで研修中の私は、来院した老人男性の症状を聞くために、相談室に向かいました。白内障の治療に訪れた老人は80歳と高齢なので、今では十分に健康ではありませんが、彼は“自分自身の世話をすることはできる”と言いました。

 老人の妻は数年前に亡くなり、今は郊外の家で孤独な生活を送っています。

 私は彼に尋ねました。

 “あなたのお孫さんはどうですか? 彼らは時々会いに来て世話をしてくれますか?”

 老人は答えました。

 “私に孫はいないが、50近い一人息子がいる。もっとも彼は今、刑務所にいるが…”と言い、少し驚いた表情の私に向けて、自分の人生を語り始めました。

 老人と彼の妻は勤勉な人であり、社会主義ソ連の時代からまじめに働き続け一人息子を育ててきました。ソ連崩壊後のロシアが最も厳しかった時期でさえ、彼らは息子の為に十分な教育や衣食住を保証してきました。

 しかし、息子は仕事に問題がありました。20年ほど前に最後の仕事を失った息子は家に引きこもり、昼間から酒を飲み不機嫌になっていきましたが、両親は息子を励まし、新しい仕事が見つかるまで、金銭的にもできる限り助け続けました。

 年月が経ち、両親は年を取り働くことが出来なくなりましたが、それでも自分たちの年金で息子を助けました。

 数年前、老人の妻は重い病気にかかり、寝たきりになってしまいました。老人の妻を診た医師は、これ以上彼女を救う手だてはないので、入院をさせずに、自宅で介護しながら残りの時間を家族で共有する事を提案しました。

 しかし、母親の世話をしたくなかった息子は最終的に自分の母親を殺めてしまったのです…。

 絶句する私に老人は優しく微笑ながら、自分自身を諭すように言いました。

 “これも人生だ。受け入れるしかない”

 仕事が終わり、病院を出た私は、並木道をゆっくりと歩きながら彼の言葉について考えました。

 “人生の意味とはなんですか?”

 木の葉で休んでいた蝶に尋ねてみましたが、それは静かに飛び去って消えていきました…。

 ■ジュリア・ミント 1994年ロシア連邦バシコルトスタン共和国生まれ。エカテリンブルクの医科大を経て、現在は大学院で眼科学を専攻する傍ら、日本人コンポーザーTAMAKIと共にノーザンスタイル・ダンスミュージック・ユニット“Crystal Mint”を結成。シンガーとして、主にヨーロッパで活動中。特技は英語、腕立て伏せ。

Instagram : https://www.instagram.com/crystalmintmusic/

Website : https://crystalmint.info/

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