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リミッター外れた!? 中国が開始した米首脳への“個人攻撃” 北朝鮮のような幼稚な罵り言葉で… ついに米との“衝突”覚悟か

 ついに中国がリミッターを取っ払った-。

 最後の引き金になったのは、やはり台湾問題だ。今年、東アジアの安全保障を語る上での最重要ポイントだと本連載でも触れてきた。蔡英文政権の台湾は、中国への対決姿勢で支持を維持するしかない。それがアジアの最大の不安定要因だからだ。

 その蔡氏にマイク・ポンペオ米国務長官がエールを送ったことで中国はついにドナルド・トランプ大統領の個人攻撃まで始めたのだ。その中身も北朝鮮を彷彿(ほうふつ)とさせる幼稚な罵(ののし)りなのだ。

 米中関係が急速に悪化した入り口は4月中旬のポンペオ国務長官と楊潔チ国務委員の電話会談だ。楊氏がトランプ政権の閣僚を「政治屋」と呼び、月末には中国メディアが一斉にポンペオ氏への個人攻撃を開始した。そして5月21日、とうとうトランプ氏もそのターゲットになったのである。

 私はこれまで何度も中国で「緩やかな“脱米”」が起きていると書いてきた。しかし、事態はもはや「緩やか」ではない。

 21日付『人民日報』は〈真実に耳をふさいだトランプに首を斬られた人々〉と題して、罷免された米政府スタッフの顔写真を並べ、下院の批准が必要な全755ポストのうちいまだ154が空席だと報じたのだ。米中対立ではなく大統領の政治手腕を揶揄(やゆ)したのだ。

 新型コロナウイルスの問題では、中国駐フランス大使館が漫画でトランプ氏をからかった。多くの研究者たちが「ウイルスはどこから来た?」と迷っているのを押しのけ「オレは知っている」と登場するトランプ氏が「チャイナだ、チャイナだ」と子供っぽく連呼する内容だ。

 もはや論争ではなく挑発だ。そして確信犯だ。

 中国を変えた原因は前述した台湾問題とファーウェイ(華為技術)である。前者は中国共産党の存在意義を脅かし、後者は中華民族に発展の道を閉ざす恐怖感を抱かせる問題だ。

 台湾問題は、日本では「自由主義vs全体主義」の戦いと解説されることが多い。だが、これは少々的外れだ。本来、中国のメンツを保ちつつ現状維持を定着できればベストだが、そこに政治体制の対立点など持ち込めば衝突は免れない。世界は損得を度外視した中国と向き合うことになるからだ。

 こんなことを書けば、あのアメリカに対し無謀な、という声が聞こえてきそうだが、70年前、原子爆弾もなく経済力で圧倒的に劣る中国が戦ったのが朝鮮戦争だ。その後も圧倒的な核戦力を有するソ連との全面戦争を覚悟した。

 現代ではそんな大げさな事態にはなかなか至らないが、それでも我慢比べには引き込まれる。人並みの生活を維持したい西側先進国は、どこまでこれに付き合えるのか。

 習政権がコロナ禍で疲弊する社会の求心力として、これを利用し始めれば厄介である。

 ■富坂聰(とみさか・さとし) 拓殖大学海外事情研究所教授。1964年生まれ。北京大学中文系に留学したのち、週刊誌記者などを経てジャーナリストとして活動。中国の政・官・財界に豊富な人脈を持つ。『中国人民解放軍の内幕』(文春新書)など著書多数。近著に『中国は腹の底で日本をどう思っているのか』(PHP新書)。

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