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姿を見なくなったおばあさんを心配

 ドブラヴィーチェル、親愛なる日本の皆さま!

 私はコロナウイルスの自己隔離中の間、時々ある人の安否を気にしていました。

 その人は背中を丸めたおばあさんで、よく路上や近所のスーパーの入り口付近で、小さな布を床に広げ、その上にいくつかの商品を置いて、歩いている人に声をかけていました。

 ある日、買い物客の一人が「リュドミラ」とおばあさんの名前を呼んでいたので、おばあさんがリュドミラという名前と知りました。

 リュドミラは、夏になると路上でパセリの束や小さなリンゴが入った袋を売り、冬にはスーパーの入り口付近で自家製の漬物やジャムなどを売っていました。そして、野菜類が入った重そうなバスケットをゆっくりと歩きながら自分で運び、自宅と売り場を往復していました。おそらく彼女はそれらの野菜を自宅の庭で栽培していたのでしょう。

 リュドミラが家族や親戚といるところを見たことはありません。たぶん彼女は今は一人暮らしで天涯孤独なのだと思います。そのため、毎月受けとる年金では足りず、生きていくための手段としてこの道を選んだと想像できました。

 でも、花が描かれたきれいなハンカチを頭に巻いて物を売るリュドミラの表情はいつも楽観的で、むしろ誇り高くみえました。そこで、もし通行人の誰かがお金をあげようとすると、リュドミラは彼らが商品を買わない限り絶対にお金を受けとろうとしません。「自分は物乞いではない」という彼女の良心とプライドがそれを許さないのです。

 その場面を見たとき、彼女は生涯ずっと働き続け、さまざまな時代を力強く生き抜いてきた人だと感じました。

 私も一度、彼女の手作りジャムを買ったことがあります。買ったジャムの瓶は少しべとべとしていましたが、そのとき、手が震える老人にとって、ひとつひとつの瓶にジャムを入れる作業がいかに大変であるかということに気づきました。

 その上、ベリーの栽培収穫とジャムの調理もひとりでやっているはずです。その作業すべてをあんな年寄りがひとりで、と想像すると私の心は沈みました。

 そして、コロナウイルスがロシアにも広まりはじめた3月になると、リュドミラの姿をみることはなくなりました。

 だから、もしかして彼女の身に…と心配していたのですが、ついに先週、ゆっくりと歩きながら暖かい太陽に微笑(ほほえ)んでいるリュドミラを見かけて、私の心は癒やされました。

 幸福はあなたの周りの人々が微笑む小さな瞬間から始まります。

 ■ジュリア・ミント 1994年ロシア連邦バシコルトスタン共和国生まれ。エカテリンブルクの医科大を経て、現在は大学院で眼科学を専攻する傍ら、日本人コンポーザーTAMAKIと共にノーザンスタイル・ダンスミュージック・ユニット“Crystal Mint”を結成。シンガーとして、主にヨーロッパで活動中。特技は英語、腕立て伏せ。(crystalmint.info)

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