【突破する日本】「デジタル化」が直撃する新聞・テレビ業界 メディア関係者は人ごとと思わない方がよい - zakzak:夕刊フジ公式サイト

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「デジタル化」が直撃する新聞・テレビ業界 メディア関係者は人ごとと思わない方がよい

 菅義偉政権は、安倍晋三前政権のように大きなテーマを掲げない。そのため、どこに向かっているのかが分かりにくい。

 例えば「デジタル化」だ。行政事務での押印廃止が注目されているが、当然、そこに止まるものではない。マスメディアも無関係でなく、人ごとと思わない方がよい。

 まずは新聞だ。役所のペーパーレス化が一気に進んでいることは、連載第3回で述べた。ペーパーレス化は新聞にも及ぶ。新聞社の主な収益源はいまだ紙の新聞の購読料と、それへの広告収入だ。それでなくても紙の新聞は購読者が年々減っている。広告収入も減る。社員をリストラした会社も多い。そこに政府が「デジタル化」を呼び掛け始めた。デジタル化は一気に進む。

 紙からデジタルに移行して収益を出している新聞社は、ごく一部を除いてない。「ゆで蛙」の例で言えば、長くぬるま湯に浸かっていたが、部数減で汗をかくほどに温度は上がっている。そこに政府が火力を強めて一気に過熱し始めたことを意味する。デジタルへの移行とそこでの収益の出し方を早急に構想しなければ、新聞に未来はない。

 次はテレビだ。菅政権は携帯電話料金の値下げを打ち出した。携帯電話会社は値下げに応じ始めたが、公共の財産である電波を寡占的にしかも格安な値段で使用し、利益を出していたからだ。構造はテレビ局も同じだ。微々たる電波使用料で莫大(ばくだい)な利益を出し、社員の待遇も突き抜けていた。しかも、政権批判でうるさい。

 デジタル化はまずは「放送と通信の融合」から始められる。テレビ番組をインターネットでも見られるようにする。障害だった二次利用での著作権や肖像権の問題もクリアされそうだ。しかし、これでテレビ離れは一気に加速する。テレビは数多くあるネットのコンテンツの1つになる。広告収入も激減する。

 次に待っているのは「電波オークション」だ。地上波テレビの電波は、NHKと在京民放キー局の系列で寡占的に使用されてきた。技術的には、テレビの地上波だけで100でも200でも放送局を設置できるとされる。既存のテレビ局はその1つとなる。

 電波オークションは、安倍前政権でも当時の安倍首相自ら言及していた。総務相経験者で電波行政に通じた菅首相は、当然視野に入れているとされる。「NHKの分割民営化」も安倍政権以来の課題だが、これも視野に入っていそうだ。公共放送の部分を残しつつ大半を民営化する。見たくもないドラマやバラエティーにまで高い受信料を払うことに、国民は納得していない。

 「デジタル化」が自らの足元を崩すことを、メディアの関係者は知った方がいい。

 ■八木秀次(やぎ・ひでつぐ) 1962年、広島県生まれ。早稲田大学法学部卒業、同大学院法学研究科修士課程修了、政治学研究科博士後期課程研究指導認定退学。専攻は憲法学。皇室法制、家族法制にも詳しい。第2回正論新風賞受賞。高崎経済大学教授などを経て現在、麗澤大学国際学部教授。内閣官房・教育再生実行会議有識者委員、山本七平賞選考委員など。法制審議会民法(相続関係)部会委員も務めた。著書に『憲法改正がなぜ必要か』(PHPパブリッシング)、『公教育再生』(PHP研究所)、『明治憲法の思想』(PHP新書)など多数。

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