【最新国防ファイル】「地下鉄サリン事件」でも成果 化学兵器などを研究し、教育訓練を行う「化学学校」 - zakzak:夕刊フジ公式サイト

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【最新国防ファイル】「地下鉄サリン事件」でも成果 化学兵器などを研究し、教育訓練を行う「化学学校」

 陸上自衛隊において、化学兵器・生物兵器・核兵器といった特殊武器を研究し、教育訓練を行っているのが、大宮駐屯地(さいたま市)にある「化学学校」だ。

 特殊武器を「NBC兵器」と呼ぶ。これは、Nuclear(核)、Biological(生物)、Chemical(化学)の頭文字をとったものだ。化学兵器は、不特定多数の人間を死に至らしめる大量破壊兵器であることから「貧者の核」とも呼ばれる。最近では、これにRadiological(放射線)、Explosive(爆発)を加え、「CBRNE(シーバーン)兵器」とも呼ぶ。テロの手段として使われる可能性があり、世界が最も警戒している武器である。

 化学学校では、1年間に3回ほどのサイクルで学生が入校する。それも化学科職種の隊員だけでなく、他職種の幹部から陸曹まで幅広く教えている。さらに、警察や消防、医療関係者、自治体などのNBC対策実務者を対象とした受託教育も行っている。

 前身となったのは、1953年6月に発足した臨時化学教育隊だ。富士駐屯地を経て、57年に大宮駐屯地へと移駐し、化学学校となった。そして、入校してきた学生に対する教育支援や化学兵器などの研究支援を行うのが2001年3月に新編された化学教導隊である。約40人で構成されている。災害派遣や防衛任務にも化学部隊の一つとして対処に当たることもある。

 この化学教導隊ができるまで、化学学校には、第101化学防護隊が置かれており、この部隊が教育支援などを担ってきた。発足当時は、日本で唯一、NBC兵器に対応できる装備と知識を持つ部隊だった。そこで、1990年9月30日に発生した「東海村JCO臨界事故」や、95年3月20日に発生したオウム真理教による「地下鉄サリン事件」にも出動した。

 こうした世界でも類を見ない事故・事件に対処した第101化学防護隊であるが、教育支援の任務を解かれ、現在は陸上総隊直轄の中央特殊武器防護隊となった。

 化学戦は、陸自にとっては基本中の基本だ。それこそ、新隊員の前期教育で必ず対化学防護を学ぶ。隊員個人装備として、防護マスクや化学防護衣を必ず持っている。化学兵器は無味無臭のものもあり、「あるエリアだけ草木が枯れている」「動物の死骸がたくさん落ちている」といった異変を確認すれば、すぐさま着用するためだ。

 化学兵器の検知や除染を学ぶための屋内型訓練施設もある。排気・排水機能が整備されており、実際に中和剤を用いた本格的な対処訓練もできる。こうした施設があるのはここだけだ。

 日本は化学テロを経験した、数少ない国の一つだ。あの時、陸自はすぐに対応し、除染活動を実施し、警察や消防に装備や知識を与えることができた。それも化学学校での教育の成果であった。

 ■菊池雅之(きくち・まさゆき) フォトジャーナリスト。1975年、東京都生まれ。講談社フライデー編集部を経てフリーに。陸海空自衛隊だけでなく、米軍やNATO軍、アジア各国の軍事情勢を取材する。著書に『自衛隊の戦力-各国との比較』(メディアックス)、『陸自男子-リクメン』(コスミック出版)など。

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