【日本を守る】二分化するアメリカの一方で、日本が直面する「見えない敵」 伝統的な束縛を嫌い国家が溶解…グラムシの不吉な予言通りに? - zakzak:夕刊フジ公式サイト

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二分化するアメリカの一方で、日本が直面する「見えない敵」 伝統的な束縛を嫌い国家が溶解…グラムシの不吉な予言通りに?

 日本は中国と並ぶ、もう1つの敵に直面している。見えない恐ろしい敵だ。米国が大統領選後に大混乱に陥っているが、これは民主党対共和党の政争ではない。

 私は毎年、春と秋にワシントンに通ってきた。今年は新型コロナウイルスのために訪れていない。

 ドナルド・トランプ政権で、ホワイトハウスの幹部を務める友人が「政権ではみな、アントニオ・グラムシの著書を勉強している」といった。

 私はグラムシを「20世紀のノストラダムス」と、呼んできた。グラムシは、イタリア共産党書記長を務めた。第二次世界大戦の2年前、ムソリーニのファシスト政権に逮捕され、45歳のとき、獄中で病死した。

 グラムシは、階級闘争によって歴史の必然として革命が成就して、共産社会が実現するというマルクス主義の理論を否定した。科学技術が進んで豊かさが増す結果、人々が自由放縦となって、理論も革命への自覚も欠き、組織されない一般の人々に権力が移って伝統社会が解体するために、国家が消滅すると予言した。

 共産主義者として国家の消滅を目標としたが、グラムシは伝統社会に根ざしたさまざまな慣習を、人々を抑圧する装置だとみた。この不吉な予言が当たろうとしている。

 いま米国を二分している対立は、4年前の「トランプ対ヒラリー・クリントン」の戦いと同じものだ。

 無国籍のグローバリズム、個人の自由に最高の価値を与え、伝統社会を抑圧・差別的だとして、LGBTQ(QはQueer=セクシュアル・マイノリティー全体を差別する『変態』という意味)など多様性を何よりも上に置く勢力が、ジョー・バイデン老人を次期大統領当選者に祭りあげた。

 もう一方に、伝統社会を頑固に守る、ドナルド・トランプ陣営がある。

 人種差別者だといって、アメリカ大陸を発見したコロンブスや、ワシントン初代大統領の銅像であれ、何でも破壊するのが良識とされている。自虐だが、良心が痛んで自分を責めているのではなく、過去を捨てて好き勝手になりたいという、わがままだ。

 日本はどうだろうか? 多くの国民が瞬間瞬間の個人的な享楽を追い求めて、伝統的な一切の束縛を遅れたものとして、自堕落な生活に耽(ふけ)っている。

 伝統社会にこそ、日本の魂が宿っている。

 国家が溶解しようとしている。日本が日本らしさを失い、共同体としての絆(きずな)が失せて、ひ弱な国になりつつある。

 ■加瀬英明(かせ・ひであき) 外交評論家。1936年、東京都生まれ。慶應義塾大学卒業後、エール大学、コロンビア大学に留学。「ブリタニカ百科事典」初代編集長。福田赳夫内閣、中曽根康弘内閣の首相特別顧問を務める。松下政経塾相談役など歴任。著書・共著に『米陸軍日本語学校』(ちくま学芸文庫)、『新しいナショナリズムの時代がやってきた!』(勉誠出版)など多数。

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