【軍事のツボ】イージス・アショア撤回とイージス艦新造は本当に正しい選択か (1/3ページ) - zakzak:夕刊フジ公式サイト

記事詳細

イージス・アショア撤回とイージス艦新造は本当に正しい選択か (1/3ページ)

 地上配備型弾道ミサイル迎撃システム「イージス・アショア」(以下アショア)の配備断念に伴い検討されていた代替案について、政府は2020年12月18日、海上自衛隊が運用する「イージス・システム搭載艦」2隻の新造を閣議決定した。秋田、山口両県へのアショア配備計画撤回から約半年かけて、複数の代替案が検討されてきたが。単に「イージス艦」としないのはコスト圧縮のため一部の装備を簡略化するなどの狙いがあるとみられるが、それでも本質的にはイージス艦と同等でコストは高水準、しかも当初の大きな目的とされた海自の負担軽減に結びつかない選択となった。

 まずイージス艦とアショアについて整理しておきたい。対弾道ミサイルについていえば、この2つは本質的に同じだ。

 イージス艦が装備しているのが「イージス戦闘システム」(以下戦闘システム)で、戦闘システムは、「イージス武器システム」(以下武器システム)や対潜戦(魚雷、ソナーなど)、対水上戦(対艦ミサイルなど)、対地上火力投射(火砲、巡航ミサイルなど)、電子戦、艦載ヘリ、対弾道ミサイルなどの各システムを統合したシステム全体を指す。

 武器システムは戦闘システムのキモで、対空戦のためにある。レーダー、対空ミサイル、指揮決定システム、武器管制システム、表示装置などからなる。アショアを構成するのはこの武器システムにほぼ限定されている。

 武器システムは旧ソ連の対艦ミサイルによる多数同時攻撃(飽和攻撃)への対応を主眼にされた。その後、弾道ミサイルが北朝鮮やイランなど広く拡散したことで、弾道ミサイル対処能力が求められるようになり、「イージスBMDシステム」(以下BMDシステム)が開発された。

 ここで注意が必要なのは、「最新のイージス艦は『ベースライン9』を搭載していて、弾道ミサイルへの対処が~」などと表現されることがあるが、ベースラインとは武器システムのバージョンのこと。武器システムとBMDシステムは別々に存在して、連携している。だから米海軍のイージス艦もすべてがBMDシステムを搭載しているわけではない。武器システムの最新バージョンは「ベースライン9」で、BMDシステムの最新は「BMD5・0」だ。

 次に、日本の状況を考えてみる。1998年に北朝鮮が弾道ミサイルを発射した「テポドン・ショック」を機に、海自はイージス艦(こんごう型)に弾道ミサイル防衛(BMD)機能を搭載し、北朝鮮に指向させてきた。

 しかし特に2010年以降、中国のシーパワーは日米に伍して上回る勢いを見せており、東シナ海、南シナ海、インド洋などで活発な活動を続ける。そのため海自は艦艇をその方面にも振り向けなければならない。

 任務は増える一方、ヒトが足りない。艦艇勤務が敬遠され海自は特に隊員募集に苦労している。海自全体の充足率は9割超あるが、艦艇乗組員では7割を超えるぐらいといわれている。

アクセスランキング

×