【真・人民日報】欧中投資協定合意なぜ今なのか 「不可測」的な米国排除、安定した利益獲得の好機 - zakzak:夕刊フジ公式サイト

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欧中投資協定合意なぜ今なのか 「不可測」的な米国排除、安定した利益獲得の好機

 先週に続いて、中国と欧州連合(EU)の投資協定での合意について書きたい。それにしても日本の報道は地味過ぎた。ひょっとしてこのニュースのインパクトを読み違えているのだろうか、と勘繰りたくなるほどだ。

 具体的には市場参入の規制緩和の約束、公平な競争環境、持続可能な発展、紛争解決のメカニズムなどで大きな進展があったとされ、協定は新エネルギー車、航空機製造、クラウドコンピューティング、金融、通信、医療の分野で投資基準を見直すという。

 だが、投資協定の重要性は個々のテーマより、欧州と中国が未来に向けて深くつながってゆく方向性を示した点にある。中国は過去30年間でアイルランドを除くEUの26カ国と投資保護協定を結んできているので、今回の合意を「小さな前進」としか見ない意見があるのはそのためだ。

 では、なぜ中国と欧州は米政権の交替期という間隙にこれを進めたのか。深読みすれば、現在、世界経済の不安定要素である「米国」という不可測性を取り除き、安定した利益を双方が獲得したいと考えた結果だろう。

 そもそも欧中の投資協定は、2018年まで米国と歩調を合わせる形で進められてきた。しかし周知のようにドナルド・トランプ政権がこれに急ブレーキをかけた。本来なら欧州との交渉も行き詰まるところだが、EUはかえってこれを加速させ米国との違いを鮮明にしたのである。

 欧中の交渉は13年から7年間も続けられてきたのだが、20年にその密度が一気に増し、年間35回もの会談が重ねられた。双方のやる気が伝わってくるエピソードだ。

 2つの経済体の接近をさらに進めたのは中国が20年1月施行した中華人民共和国外商投資法である。外資系企業の知的財産を保護すること、参入企業を国内企業と同等に扱い、政府調達からも排除しないことなどを明確に法律として定めた。

 ここに投資協定が加わり、従来は中国資本との共同経営しか許されなかった分野に独資が入り込む。例えば、北京や上海、深センなどでドイツが単独で病院を開くこともできるのだ。

 米中対立の「漁夫の利」はこういう点にあるという良い実例だ。

 昨年末、欧州委員会のフォンデアライエン委員長らと習近平国家主席がオンライン会談で交渉の妥結を宣言したのは、地域的な包括的経済連携(RCEP)からわずか半月のことである。

 日本のメディアは「ワクチン外交」などとピントのズレたことを報じている場合だろうか。

 ■富坂聰(とみさか・さとし) 拓殖大学海外事情研究所教授。1964年生まれ。北京大学中文系に留学したのち、週刊誌記者などを経てジャーナリストとして活動。中国の政・官・財界に豊富な人脈を持つ。『中国人民解放軍の内幕』(文春新書)など著書多数。近著に『中国は腹の底で日本をどう思っているのか』(PHP新書)。

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