【勝負師たちの系譜】藤井聡太二冠、朝日杯3度目の優勝 相手を迷わせる無言の圧力 - zakzak:夕刊フジ公式サイト

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藤井聡太二冠、朝日杯3度目の優勝 相手を迷わせる無言の圧力

 タイトル保持者が防衛するのは容易ではないが、確率からすれば5割の勝負をしていることになる。

 その点、全棋士参加のトーナメント戦で優勝するのは、170分の1であり、これを何度も優勝することは、確率的には奇跡に近いと言える。

 「朝日杯将棋オープン戦」では、一度優勝すれば本戦にシードされるから、実際には確率16分の1だが、それでも大変なこと。それをすでに藤井聡太二冠は、2018年度とその翌年、連続で優勝をしている。

 そして今期も勝ち上がり『有楽町マリオン』で行われる、準決勝からの舞台に進んできた。

 今期はコロナの影響で、無観客での対局。ファンには残念だったと思うが、やむを得ない。

 その代わり朝日新聞デジタルでは、現地から木村一基九段の解説、そしてABEMAでは広瀬章人八段と三枚堂達也七段の解説。

 また日本将棋連盟の中継ブログがあるので、リアルタイムで楽しんで頂けたかと思う。

 準決勝は渡辺明名人対藤井二冠、三浦弘行九段対西田拓也四段の2局。毎年ベスト4の中に、誰かしら新人棋士が顔を出しているところに、昨今の若手の層の厚さが窺える。

 ここでの渡辺-藤井戦が圧巻だった。相掛かりから渡辺がうまく指し回し、終盤ではハッキリ渡辺の勝ち筋。タイトル保持者クラスになると、ソフトの値に1000点差が付いたら、まず逆転しないものだが、この将棋では3000点違っていた。

 しかしこの将棋はその差を保ちながらも、藤井が簡単に土俵を割らずに粘っていると、最後に渡辺が実質5手詰めを読めずに悪手を指し、逆転したのである。

 決勝も藤井は、三浦九段相手に大苦戦。終盤で4000点差をひっくり返して勝利を得た。

 終盤の強さに定評のある藤井にしても、トップ棋士を相手にこれだけの逆転劇は初めてであろう。

 特に三浦戦は、飛車を切った手に対して、相手が素直に取れなかったことが逆転の原因だった。

 これが詰将棋解答選手権、5年連続優勝の信用だろうか。トッププロなら冷静に考えれば、10秒もあれば詰まないことは確認できる局面だった。

 秒読みの最中とは言え、それを迷わせるところに、藤井の強さというだけでなく、無言の圧力を感じたものだった。

 ■青野照市(あおの・てるいち) 1953年1月31日、静岡県焼津市生まれ。68年に4級で故廣津久雄九段門下に入る。74年に四段に昇段し、プロ棋士となる。94年に九段。A級通算11期。これまでに勝率第一位賞や連勝賞、升田幸三賞を獲得。将棋の国際普及にも努め、2011年に外務大臣表彰を受けた。13年から17年2月まで、日本将棋連盟専務理事を務めた。

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