【昭和のことば】戦没学生手記遺稿集の題名 「きけわだつみのこえ」(昭和24年) - zakzak:夕刊フジ公式サイト

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戦没学生手記遺稿集の題名 「きけわだつみのこえ」(昭和24年)

 この年、東大協同組合出版部から刊行された戦没学生手記遺稿集の題名である。「わだつみ」とは、日本神話における海(の神)のこと。書名は2000通の公募により採用された。家族への痛切な思い、戦争への疑問や生への渇望が学生らしいみずみずしい文体でつづられ、広い共感を呼び、のちの「青年・学生層の不戦の誓い」へと発展していった。

 一方、手記は高等教育を受けていた層に限定されていたため、人間の死ではなく、「インテリ層の死」を美化しているだけ、と三島由紀夫などからの厳しい評価を受けた。

 この年の主な事件は、「文部省、教科書用図書検定基準を決定」「第3次吉田茂内閣成立(蔵相池田勇人)」「ドッジ公使、経済安定9原則実施に関する声明発表(ドッジ・ライン)」「東京消防庁、119番設置」「1ドル=360円時代に突入」「日本国有鉄道、日本専売公社発足」「国鉄総裁下山定則氏、轢死体で発見(下山事件)」「三鷹事件、松川事件発生」「シャウプ税制調査団、『シャウプ勧告』発表」「湯川秀樹、ノーベル物理学賞受賞が決定」「太平洋野球連盟(パシフィック)、セントラル野球連盟結成」など。

 水泳の古橋廣之進が1500メートル自由形で世界新記録を達成。文学では、三島由紀夫『仮面の告白』が出版。アメリカから、野球チーム「サンフランシスコ・シールズ」が来日した。

 筆者の知る昭和40年代、この本は一般家庭でよく目にしたように思う。戦後20年にも満たない時期、高度経済成長に邁進(まいしん)し、過去は振り返らないとうそぶきながらも、散っていった若者たちへの思いが確実に世間のなかにあった。=敬称略(中丸謙一朗)

 〈昭和24(1949)年の流行歌〉 「トンコ節」(久保幸江)「長崎の鐘」(藤山一郎)「悲しき口笛」(美空ひばり)

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