【勝負師たちの系譜】大山康晴15世名人の予言 AIの台頭や矢倉戦法の変化現実に 「機械と勝負してはダメよ。いつか勝てなくなるから」 - zakzak:夕刊フジ公式サイト

記事詳細

大山康晴15世名人の予言 AIの台頭や矢倉戦法の変化現実に 「機械と勝負してはダメよ。いつか勝てなくなるから」

 その世界の第一人者となると、未来のことまでわかってしまうのだろうか、と思わせることがいくつかある。

 将棋界では15年ほど前、AIはどこまで強くなるかを全部の棋士に問いかけたことがあった。「プロがAIに抜かれる時代は来ない」という回答が多かった中、羽生善治九段は「2015年頃に抜かれる」と答え、ほとんどその通りになった。

 AIに関しては30年以上前に、故大山康晴15世名人が「機械と勝負してはダメよ。いつか勝てなくなるから」と言っていた。その根拠に機械は感情がないから、ということがあったと思う。

 15世の勝負観は「将棋は最後に悪手を指した方が負ける」というものだった。人間は焦りや迷いという感情があり、どんなに優勢になっても、最後に間違える要素があるが、機械にはそれがないから、ということだ。

 相手が人間であれば、苦戦でも逆転のチャンスはある、という信念で指していたように私は感じた。

 15世の予言といえば、1980年頃から主流となった『飛車先不突矢倉』を見て「あんなのおかしいよ。そのうち皆、突くようになりますよ」と言ったことをよく覚えている。

 私はこの時(飛車先を突かないのはプロらしい含みのある指し方で、このことだけは残念ながら大山先生も当たらないだろう)と思ったものだった。

 しかし今日、数年前からだが、プロの矢倉はすぐに▲2五歩と飛車先を突く形だけになってしまった。

 突かないと、後手からの急戦策に対抗できなくなったという、矢倉戦の序盤が進歩したせいもあるが、40年の時を経て、予言が現実となったのである。

 同じく角交換腰掛銀も、長い間ほとんどが飛車先保留だったのが、今では早い段階で皆が突いている。

 これは現在の主流が▲4八金~▲2九飛型という、攻撃的な陣形になったからだが、この戦法は元々50年頃に多く指され、ダメだということですたれた作戦だった。

 復活したのは、現代の若手棋士による研究もあるが、AIの影響がかなりあるかと思う。

 今までのプロの先入観を180度ひっくり返す指し方が出てきた今、15世ならどういう感想を言うか聞いてみたい気がする。

 ■青野照市(あおの・てるいち) 1953年1月31日、静岡県焼津市生まれ。68年に4級で故廣津久雄九段門下に入る。74年に四段に昇段し、プロ棋士となる。94年に九段。A級通算11期。これまでに勝率第一位賞や連勝賞、升田幸三賞を獲得。将棋の国際普及にも努め、2011年に外務大臣表彰を受けた。13年から17年2月まで、日本将棋連盟専務理事を務めた。

関連ニュース

アクセスランキング

×