【日本の安全保障戦略】学術界にはびこる「反自衛隊イデオロギー」 科学技術と国防の分断を克服せよ! 10年後の中国の力は圧倒的に、戦争では科学技術で負ける方が負ける - zakzak:夕刊フジ公式サイト

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【日本の安全保障戦略】学術界にはびこる「反自衛隊イデオロギー」 科学技術と国防の分断を克服せよ! 10年後の中国の力は圧倒的に、戦争では科学技術で負ける方が負ける

 ジョー・バイデン米政権は、本格的に中国との大国間競争に備え始めた。中国も、腰を落として持久戦の構えである。「2030年までには、中国は米国の経済規模を抜く」と言われている。ナチスドイツでさえ米国の3割強の工業力と言われた。大日本帝国は1割程度だった。米国は初めて、自分より大きな国との戦略的競争関係に入る。

 従来、米国の圧倒的な国力の源泉は、インターネットを生み出した世界最先端の科学技術だった。今でも米国の科学技術予算は20兆円である。その半分が国防総省に流れる。科学技術庁の存在しない米国では、国防総省が基礎研究からさまざまな研究に取り組む。国立研究所や民間企業にもこの予算が流れていく。WTO(世界貿易機関)の規制を受けない事実上の開発補助金である。

 米国は、先進コンピューティング、人工知能、量子科学、バイオテクノロジー、先進半導体など、巨額の国家投資をもって技術的な優位を奪われまいと必死である。

 中国が、その米国に迫り始めた。中国共産党が、軍事も行政も産業も学術も牛耳る中国では、軍民融合政策の下で巨大な軍産学複合体が成立している。中国では、最先端の科学技術がそのまま核武装した人民解放軍の軍事装備に反映される。

 中国は、北のシベリア、西のゴビ砂漠、南のヒマラヤ山脈という天然の要害に守られて、台湾有事に全力を投入できる。10年後の中国軍の力は、域内で圧倒的なものとなり得る。正面に立つのは日米同盟である。将来の戦争では、科学技術で負ける方が負ける。米中ともにその厳しさをよく認識している。

 翻って日本はどうか。

 4兆円の科学技術予算はそこそこの大きさだが、学術界に古色蒼然とした反自衛隊イデオロギーが強く、防衛省には1300億円しか回らない。日本には「科学技術」と「国防」の間に、マリアナ海溝より深い「死の谷」がある。

 4兆円の使途を決める首相主宰の総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)には、反軍の色彩が強い学術会議会長が常任議席を占めるが、防衛担当の防衛相はもとより、防災担当の国交相、防疫担当の厚労相も議席がない。

 日本の国家予算は100兆円であり、国債、地方、医療年金を除けば20兆円の規模でしかない。4兆円の血税は、防衛、防災、防疫とは無関係な「研究のための研究」に使うには大きすぎる。しかも、その大きな部分が研究とは無関係の大学職員の給与に充てられている。

 日本の科学技術予算を、防衛、防災、防疫に役立てるように大なたを振るう時期に来ている。

 ■兼原信克(かねはら・のぶかつ) 1959年、山口県生まれ。81年に東大法学部を卒業し、外務省入省。北米局日米安全保障条約課長、総合外交政策局総務課長、国際法局長などを歴任。第2次安倍晋三政権で、内閣官房副長官補(外政担当)、国家安全保障局次長を務める。19年退官。現在、同志社大学特別客員教授。15年、フランス政府よりレジオン・ドヌール勲章受勲。著書に『戦略外交原論』(日本経済新聞出版)、『歴史の教訓-「失敗の本質」と国家戦略』(新潮新書)など。

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