【勝負師たちの系譜】藤井聡太二冠の伝説の一手 「本物を瞬時に見分ける」他棋士と違う能力 - zakzak:夕刊フジ公式サイト

記事詳細

藤井聡太二冠の伝説の一手 「本物を瞬時に見分ける」他棋士と違う能力

 この3月末を持って、将棋界も2020年度が終わった。これから年度の成績が発表され、数字部門のランキングや、年間の最優秀棋士を始めとする、選考部門での表彰が行われる。

 特に強さのバロメーターとされる、勝ち星と勝率は、勝ち星が藤井聡太二冠と永瀬拓矢王座が44勝で同星。勝率1位は藤井が0・846でダントツの1位を決めた。

 藤井はこれで、4年連続の8割越えとなる。初年度は藤井の当たった相手が、若手やCクラスが多かったので、一時の勢いと見ていた人も、最近は相手がトップクラスだけだから、価値がある。

 歴代の勝率ベスト10の中に、藤井は中原誠16世名人、羽生善治九段と共に、2回入っているのも、本物の証拠だ。

 また記録部門と同時に、この年度末、藤井に伝説となる一手が飛び出したことも話題となった。

 以前にも触れたことがあるが、将棋界に詳しい人なら、一生の記憶に残る一手、伝説の一手を残せるのは、トップクラスでもほとんど生涯に一手か二手だ。

 升田幸三実力制第四代名人の△3五銀、羽生の▲5二銀、中原の▲5七銀と言えば、あの手は感動したとすぐに思い出せる伝説の一手だが、藤井はこの若さでもはや複数持っているのである。

 藤井の△7七飛成、△3一銀と言えば、AIを超えた手として有名だが、今回竜王戦で松尾歩八段相手に、相横歩取りのギリギリの終盤戦の中、タダで取れる飛車を取る前に、▲4一銀と王手に捨てる妙手が出た。

 これは銀を犠牲に、相手玉を壁型にさせる一手で、いわば銀一枚で一手稼ぐ手なのだが、リアルタイムで見ていた棋士は、「この手を見られる時代に生きていて良かった」と感動したという。

 同じプロでも、リアルタイムで見ていた棋士と後で並べて知った棋士では、大きく印象は違ってくる。後で棋譜で知った棋士だと「なるほど良い手だ」くらいにしか感じないが、検討しながら見ている棋士には驚愕の一手と感じるのだろう。

 それにしても、藤井の将棋だけに妙手が潜んでいる訳はないので、妙手を発見する能力、すなわちたくさんのガラスの中から、本物のダイヤを瞬時に見分ける能力が、他の人と違っているのかも知れない。

 ■青野照市(あおの・てるいち) 1953年1月31日、静岡県焼津市生まれ。68年に4級で故廣津久雄九段門下に入る。74年に四段に昇段し、プロ棋士となる。94年に九段。A級通算11期。これまでに勝率第一位賞や連勝賞、升田幸三賞を獲得。将棋の国際普及にも努め、2011年に外務大臣表彰を受けた。13年から17年2月まで、日本将棋連盟専務理事を務めた。

関連ニュース

アクセスランキング

×