【警戒せよ!生死を分ける地震の基礎知識】神奈川・三浦半島の異臭騒ぎ「第2波」 首都圏直下型地震の前触れとの説も - zakzak:夕刊フジ公式サイト

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神奈川・三浦半島の異臭騒ぎ「第2波」 首都圏直下型地震の前触れとの説も

 神奈川・三浦半島の異臭騒ぎが再発した。

 もともと2020年の初夏から始まったもので、自治体への通報は400回を超えた。冬になって通報はなくなったが、また3月から通報が30回以上とぶり返した。

 これは首都圏直下型地震の前触れなのではないかという説が流れた。他方、海からの風が吹いているときに通報が多いので、船が原因なのではという説もあった。

 自治体としては放置するわけにもいかない。県は地元の消防署と連携して、隊員に通報時の現場の空気を採取してもらって分析している。いままでのところでは、採取できた空気の臭い成分はイソペンタン、ペンタン、ブタンなど。いずれもガソリンや原油に含まれる物質だった。

 三浦半島にはいくつかのガス田がある。南関東ガス田の一部だ。多摩川を越えて東京都から神奈川県に入り、三浦半島の北半分にまで延びている。南関東ガス田の総面積は4300平方キロメートル。千葉、茨城、埼玉、東京、神奈川の5都県に及んでいて埋蔵量が7400億立方メートルにもなる。日本の天然ガス埋蔵量の9割を占める国内最大の大きなガス田だ。ガス田からの臭いはまちまちで、無臭から原油の臭いに近いものもある。

 第二次世界大戦中にはこのガス田から採掘したメタンガスからガソリンや航空燃料を作って日本軍に供給した。東京・渋谷の温泉施設での2007年の爆発事故もこのガス田のガスが原因だ。

 ちなみに多くの自治体が、ガス利用を禁じている。個人が勝手に燃料として利用はできない。

 しかしイソペンタン、ブタンなどは採取できたものの一部にすぎない。寄せられた通報には、その他にも「ガス臭い」「薬品臭い」「シンナー臭い」「ゴムの焼けたような臭い」などがあり、そのほか「腐敗臭」「硫黄臭い」などもあった。通報内容や臭いも時間や場所もまちまち、発生場所も発生源も1つではなさそうだと県はいう。

 そもそもニオイの分子が鼻腔内に入ると、鼻の天井部の嗅粘膜にある粘液に溶け込む。そこにある「嗅細胞」が興奮して電気信号が発生し、信号が大脳に到達することでニオイの感覚が生じる。嗅粘膜は、ヒトで片側が2・5平方センチメートルで約1000万個の嗅細胞がある。臭いを感知する最小の濃度は1ppb(10億分の1)で大変に鋭敏だ。個人差があり、他人に影響される心理的な要因もあって、なかなか機械では追いつけない。

 このためもあって発生源の特定や原因解明は難航している。2020年6月に最初の通報があり、その日には時間を追って通報地点が北上した。そのときには南風が吹いていたので半島の南側海上に発生源があったと考えられる。一方、7月には北風で東京都方面に、8月には南西の風で東京湾上に、それぞれ発生源があったと考えられている。

 さて、異臭騒ぎは続くのだろうか。そして、大地震の前兆なのだろうか。地震の前兆として異臭が発生するという科学的な根拠は、いままでには報告されていない。だが、首都圏で大地震が起きたのは随分前で、臭いの報告もない。大いに気になる動向ではある。

 ■島村英紀(しまむら・ひでき) 武蔵野学院大学特任教授。1941年、東京都出身。東大理学部卒、東大大学院修了。北海道大教授、北大地震火山研究観測センター長、国立極地研究所所長などを歴任。著書多数。最新刊に『多発する人造地震-人間が引き起こす地震』(花伝社)。

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