【日本の元気 山根一眞】不十分なワクチン態勢、西村大臣の「圧力」…失墜した政府への信頼 - zakzak:夕刊フジ公式サイト

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不十分なワクチン態勢、西村大臣の「圧力」…失墜した政府への信頼

 私は7月上旬、新型コロナの2回目のワクチン接種を受けた。ワクチンを接種し、安心感をもって一日も早く「対面取材」をしたかった。そこで自衛隊による東京・大手町の大規模接種会場で、早めの接種を終えたのだ。

 早速いくつかの取材に出たが、あるモノつくりの小企業の取材では、インタビューとともに精緻きわまりない製品を見せられ大感激。私の興味に合わせて数多くの製品を出してくれたので、思いがけず顕微鏡撮影モードカメラで数多くの写真を撮ることができた。こういう思いがけない発見や経験はオンライン取材ではできないなぁと実感した。

 今、私たちがコロナ感染の低リスクのもとで、社会的な活動に復帰できる唯一の選択肢がワクチン接種だ。酒類を提供する飲食店も「ワクチン2回接種者」に限って客の受け入れOKとすれば、感染拡大の危険性は低く、深夜までの営業も可能になる。

 ワクチン接種を忌避する若い世代も、飲食店で夜の時間を楽しめるとなれば接種に足が向くはずだ。ワクチン接種は社会生活への復帰、そして経済再生への切り札なのだ。東京五輪も2回接種者の入場を可能とすれば、アスリートたちは無観客というむなしい競技を味わわずにすんだはずだ。

 という入店、入場のためには、スマホのアプリなどを活用した間違いない接種証明書(パスポート)の発行、確認が前提となる。だが国は、接種完了・即時の接種証明書の発行ができていない。

 接種と接種証明書はセットであってこそ意味があるが、接種証明書が出ないのは運転免許試験に合格しても免許証が出ないため運転できないのに等しい。

 輸入ワクチンによる接種実施は半年前からわかっていた。接種証明書とセットでなければ国民の社会生活の復帰と経済再生は先延ばしになる。それくらいのことすらわかっていない政府ゆえ、もはや何度、緊急事態宣言を出そうとも国民が行動を変えることはないだろう。

 折しも、西村康稔経済再生担当大臣が「営業を続ける飲食店には金融機関から圧力も」という趣旨の発言をし、猛反発を受けている。内閣官房による同趣旨の事務連絡文書の存在が伝えられ、内閣ぐるみの方針だったのではないかともみられている。

 国としてすべきことをしないまま頬っかむりをして、こんな形の「圧力」を口にしたことで政府への信頼は失墜、緊急事態宣言の効果はさらに期待できなくなったのではないか。それがインド型(デルタ株)による感染拡大の危険性を、かえって大きくするかもしれない。

 ともあれ西村大臣の責任はきわめて大きい。こういう人物を「新型コロナウイルス感染症対策担当大臣」に任命した菅義偉首相も任命責任がある。2人そろって「飲食店崩壊を画策した罰として生涯、一滴の酒も口にしないことを自らに課します」ぐらいの約束を国民にしてほしい気持ちだ。

 ずるずる、だらだらのコロナ対策がいつまで続くのか。残念ながら今言えることは、「東京五輪を人類がコロナに打ち勝った証しの大会とする」ことに失敗したことだけだ。

 ■山根一眞(やまね・かずま) ノンフィクション作家、福井県年縞博物館特別館長。北九州博覧祭北九州市パビリオン、愛地球博愛知県総合プロデューサーなど多くの博覧祭、万博を手がけてきた。近刊は『スーパー望遠鏡「アルマ」の創造者たち』。「山根一眞の科学者を訪ねて三千里」(講談社)などを連載中。理化学研究所名誉相談役、JAXA客員、福井県文化顧問、獨協大学環境共生研究所客員研究員、日本文藝家協会会員。

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