【大前研一のニュース時評】若者の未来ともす?地方都市間競争 多様な働き方できる環境1位に石川県小松市 - zakzak:夕刊フジ公式サイト

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若者の未来ともす?地方都市間競争 多様な働き方できる環境1位に石川県小松市

 日経新聞電子版(7月18日)に「アメリカンドリーム、今は昔?」と題する記事があった。その中に「米国ハーバード大のラジ・チェティ教授率いるチームが30歳時点の親と子の収入を比べたところ、1940年生まれは92%が親の収入を超えたが、84年生まれは50%に大きく下がった」というデータがあった。

 親の収入を超える子供の比率は年々低下し、実家暮らしの若者の数も過去120年で最多になったという。

 この現象は米国だけでなく、日本でもまったく同じ。深刻な問題だと思う。

 例えば、昭和30年代に集団就職で東北などから上野駅に降り立った人たちは、東京の会社や工場で働き、故郷のお父ちゃんよりも稼いでいた。その次の世代ぐらいまでは、ま、何とかやってこられた。南こうせつの「神田川」の世界ではないが、銭湯に行っていても将来には希望があった。

 しかし、現在では親の世代を超える人は非常に少ない。よほどITなどに精通しているとか、金融などの特殊技能がないと難しい。

 生まれたときから右肩下がりの社会に生きる若い人たちの多くは、将来も明るいとは思ってはいない。彼らのやる気をどう引き出すのか。目標達成など成果をあげた人に対するインセンティブ(報奨)はどうするのか。課題は多い。

 「将来の方が明るい」と思わせる国づくりは、もう国が行うのは無理なのかもしれない。ここは都市や街別に若い人たちを吸引し、地方都市間で競争させるということも1つの手ではないか。これに関連して、新しい指標で分析したデータがある。

 日経新聞と東京大学が全国主要都市の平均通勤時間などのデータを集計し、多様な働き方ができる環境かどうかを点数化してランキングしたところ、石川県小松市が首位となった。2位は鳥取市、3位は富山県高岡市。以下、愛媛県西条市、長野県飯田市、青森市、金沢市、福井市…と続いた。トップ30の68%を10万人台の都市が占めた。

 データに使った指標は、通勤時間のほか、公衆無線LANの整備状況、保育サービス利用率、徒歩圏に生活関連施設がある人口比率、地域内の経済循環率・コロナ前後の昼間人口増減率、住宅面積、福祉施設の整備状況。新しい職住スタイルに適した環境づくりが都市の成長力を左右するとしている。

 1位の小松市は学童を含む保育環境や福祉施設の充実度が最高点。市内に製造業が集まっているほか、空港だけでなく温泉もたくさんあり、魅力ある金沢市にも近くて、出勤、在宅勤務のどちらも選択しやすい環境にある。また、高岡市には製薬会社が多数あり、金沢も新幹線がつながってから非常に忙しくなっているし、最近ではグルメタウンとして予約の取れない人気料理店がめじろ押しだ。

 どの街も行ったところばかりだが、金沢以外は人口が10万~20万人で、そこそこの生活インフラがあり、近くにまあまあ大きな都市もある。

 私はこの指標に全面的に賛成というわけではないが、コロナ禍でテレワークなど働き方が一変したのを踏まえ、いろんな仕事があって多様な働き方ができ、生活環境もいい中堅都市を、ライフスタイルに加え、効率よく働くことを重視する若い人たちが望んでいる表れではないかとみる。

 ただ、この辺で満足してしまうという目線の低さも考えモノだとは思うが…。

 ■ビジネス・ブレークスルー(BBTch)の番組「大前研一ライブ」から抜粋。

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