【国会ここに異議あり】野党が政権追及する場ではない「党首討論」 国家観や歴史観を含めた「党首力」を競う場、深く議論せよ - zakzak:夕刊フジ公式サイト

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【国会ここに異議あり】野党が政権追及する場ではない「党首討論」 国家観や歴史観を含めた「党首力」を競う場、深く議論せよ

 立憲民主党の枝野幸男代表は、党首討論の趣旨を理解していないのではないか。枝野氏は6月9日に行われた2年ぶりの党首討論で、予算委員会での質疑と同じように、菅義偉首相(自民党総裁)を追及することに主眼を置いた。だが、そこは政権を「追い詰める」ための場ではない。

 党首討論は、英国下院のクエスチョンタイム(QT)をモデルに、立憲民主党の前身、民主党が主導して2000年に始まった。政権交代可能な選挙制度導入を機に、野党の政権担当能力をアピールする狙いがあった。

 このため、与野党党首が国家的な課題について、首相の質問権も認めたうえで深く議論することが求められる。党首としての基本的な考え方をアピールすることに目的がある。いわば、国家観や歴史観を含めた「党首力」を競う場なのである。

 枝野氏は本来ならば、人類と感染症の歴史的考察などを踏まえて、菅首相が同調せざるを得ないような新型コロナウイルス対策や東京五輪への考え方を打ち出し、自身や立憲民主党をアピールすべきだった。政府を批判したいのは分かったが、では、どうしたいかは伝わってこなかった。

 メディアは、菅首相がペーパー(資料)を用意していたことや、迫力が不足していたことを批判していたが、私にはむしろ、菅首相の方がコロナ対策や東京五輪に対する基本的な考え方を雄弁に語っていたと感じた。

 菅首相から枝野氏が質問されて、たじろぐ場面もあった。

 枝野氏や立憲民主党が主張している「ゼロコロナ戦略」について、菅首相に「要は、無症状の方も含めて検査を実施して感染者を徹底して探すということになるが、(枝野氏は)特措法の私権制限強化に慎重な立場だった。国民の皆さんにどうやって強制的な検査を受けてもらうのか」と迫られたのだ。

 枝野氏は「検査対象拡大は政令でできる」「(補償とセットであれば)私権制限は否定していない」などと防戦に努めたが、とても、「真正面からの答え」とはいえなかったのではないか。

 党首討論については、時間が短いことが問題にされるが、導入時の討論時間は40分だった。英国QTが30分であることを参考に決められた。それが5分延長されて現在の45分になっている。

 与党は当初、導入に消極的だった。法案審議にはカウントされないし、公明党は連立与党であることから出番もない。だから、前々回の党首討論終了後、枝野氏が「今の党首討論制度はほとんど歴史的意味を終えた」と口走ると、すぐ与党側から「それならやめたっていい」との声が上がった。与党側には何のメリットもないからである。

 枝野氏が党首討論で存在感を高めるためには、まずは、与党を批判すれば野党への支持が集まるとの発想を捨てるところから始めるべきだ。そのうえで、立憲民主党としての政策を具体的に練り上げるべきだ。それが枝野氏の「党首力」を鍛えることになる。党首討論における本当の相手は、菅首相ではなく国民なのである。

 ■伊藤達美(いとう・たつみ) 政治評論家。1952年、秋田県生まれ。講談社などの取材記者を経て、独立。永田町取材三十数年。政界、政治家の表裏に精通する。著作に『東條家の言い分』『検証「国対政治」の功罪』など多数。『東條家の言い分』は、その後の靖国神社公式参拝論争に一石を投じた。

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