【警戒せよ!生死を分ける地震の基礎知識】台風を小さくする新技術の行方 冷たい海水を浮上させ、海水面の温度を下げる“バブル・カーテン” - zakzak:夕刊フジ公式サイト

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台風を小さくする新技術の行方 冷たい海水を浮上させ、海水面の温度を下げる“バブル・カーテン”

 日本ではようやく台風のシーズンが終わったが、台風のエネルギーは広島型原子爆弾1万8000個分に匹敵する。とても巨大なものだ。

 台風、サイクロン、ハリケーンはすべて同じもので、熱帯性で強い低気圧だ。地域別に名前が違う。いずれにせよ、襲われた国は大変な損害を被る。

 この台風などの被害を小さくしようという研究が昔からあった。

 進路を変えることが検討されたことがある。原爆を使えば巨大なエネルギーを持つだけに可能かもしれない。

 だが、進路を変えるのは他の国に行かせることになる。新たに行った国との間で国際問題になりかねまい。

 そこで台風そのものを弱くして、あわよくば消してしまおうという研究がノルウェーで進められている。

 海面の温度が26~27℃を超えると、台風が発達する。日本近海はこのしきいよりも低かったので、いままでは台風が弱まって熱帯低気圧になってから日本に上がってきた。これからは地球温暖化のせいで、海水温が上がって台風が弱まらないで日本に上がってくる可能性が大きくなるのだ。

 日本には限らない。世界各国で同じ悩みを持っている。

 このほどノルウェーで開発されたのは「バブル・カーテン」という技術である。

 この手法は船に穴のあいたパイプを取り付け、海中に気泡を放出する。こうすることによって深いところにある冷たい海水が浮き上がらせる。台風にエネルギーを注ぎ込む温かい海水を冷やしてしまおうという魂胆である。

 たしかに海水面の数十メートル下では数度、場所によっては4度くらいに下がる。表面温度を下げるというのは台風を消し去るには有効な方法だ。

 しかし、台風が発達する広い範囲をカバーしなければならない。これには19億円かかるという。ハリケーンを消すためにはメキシコ湾や大西洋全域にこのバブル・カーテンを張り巡らさなければならないからである。

 しかし、たとえば2017年に米国が受けた台風の被害額は30兆円を越えるし、各国でも被害は大きいから、それに比べれば19億円は少額とも言える。

 だが、このバブル・カーテンには、この他にいくつもの問題がある。1つはこのバブル・カーテンは海の生態系を変えてしまうのではないかという恐れだ。

 たとえば藻類も強制的に海面へ運ばれてくることになる。こうした1つの変化は、プランクトンそして魚に影響して、ドミノのように連鎖的に次から次へと別の影響へと発展するかもしれない。生態系が変わってしまうのだ。

 これ以外の問題は、それぞれの地域にとって必要な雨を降らしてくれるという側面もある。台風は疫病神だが、乾いた滞水層を潤わせてくれる役目だ。世界の陸地の3分の1が砂漠化している現代にあっては、バブル・カーテンで台風を消し去ってしまうわけにはいかないという懸念がある。

 さて、この新技術が実際に大規模に行われるのだろうか。

 ■島村英紀(しまむら・ひでき) 武蔵野学院大学特任教授。1941年、東京都出身。東大理学部卒、東大大学院修了。北海道大教授、北大地震火山研究観測センター長、国立極地研究所所長などを歴任。著書多数。最新刊に『多発する人造地震-人間が引き起こす地震』(花伝社)。

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