【日本の元気 山根一眞】福井で出合うマヤ文明2500年の年縞 特別展11月1日まで - zakzak:夕刊フジ公式サイト

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福井で出合うマヤ文明2500年の年縞 特別展11月1日まで

 謎に満ちた古代文明は私たちの空想をかき立てるが、そのひとつ、マヤ文明はなじみが薄いかもしれない。私が、15-16世紀にインカ王らが居住した空中都市遺跡、マチュ・ピチュなどインカ文明の遺跡を訪ね歩いたのは48年も前のことだが、マヤ遺跡は未訪問のままだった。

 インカは南米ペルーやボリビアなどアンデス地方に栄えた。一方、マヤは中米のグアテマラやメキシコのユカタン半島などで繁栄した文明だ。私がやっとマヤ文明の中心地のひとつ、グアテマラを訪ねたのは2015年9月、立命館大学古気候学センターの北場育子さんや中川毅さん(同センター長)とともに、鳴門教育大学の米延仁志さんの調査プロジェクトに同行した時だった。北場さんらはグアテマラ北部のペテシュバトゥン湖の年縞(ねんこう=1年ごとに縞々を作る湖底の堆積層)を苦労の末に掘削した。

 年縞には植物の葉の化石などが含まれており、その放射性同位元素を調べることで、各年代の気候変動などがわかる。福井県年縞博物館(若狭町)は、中川毅さんのチームが近くの三方五湖のひとつ、水月湖の湖底をボーリングして得た7万年分、45メートルの年縞をズラーッと展示、明らかとなった過去の気候変動などを解説している。その科学成果は世界でも高い評価を受け、年縞博物館は今年、全国の5700余の博物館から唯一、日本博物館協会賞を受賞する栄誉もいただいた。

 マヤ文明の年縞調査も同じ科学手法で、マヤ文明の衰退と気候変動の関係を年縞で明らかにすることが目的だ。そのグアテマラのペテシュバトゥン湖で得た年縞は1年分の縞が1センチと厚く激しい気象異常を物語っていたが、マヤ文明2000年分の年縞を得ることはできなかった。

 そこでターゲットを絞ったのがメキシコのサン・クラウディオ湖で、その湖底の年縞ボーリング採取の挑戦を続けてきた。クラウドファンディングによる支援などをいただいたおかげで、ついに67本の堆積物(コア)をゲット。年代順につなぐと全長は6・5メートルで、その上部、現在から2500年前までマヤ時代をほぼカバーする年縞を手にするという世界初の奇跡的な成果が得られたのだ。

 その年縞からは、湖の周囲に居住していたと思われるマヤ人のウンチの痕跡を物語る窒素同位体も見つかった。そのウンチ、ある年に突然消えていた。マヤ人が何らかの理由によってこの地に住み続けることができなくなり移動した可能性がある。

 年縞博物館と隣接する若狭三方縄文博物館では、この世界初の年縞によるマヤ文明の衰退を解明する仕事の全貌、年縞の現物を公開する特別展「マヤの年縞をめぐる冒険2021」を共同開催中だ。コロナ禍の影響で開催期間を11月1日(月)まで延長、10月23日(土)には、北場さんらの報告を中心とする記念シンポジウム「年縞・遺跡 マヤ文明の足跡」も開催、私が司会をします(会場はレピア白梅殿、福井県若狭町鳥浜)。

 昨年、アリゾナ大学の猪俣健教授らによって、メキシコでマヤ文明最大の遺跡が発見され大きなニュースになったが、猪俣さんもビデオで出演する(コロナ対応で来日できず無念)。

 コロナ感染予防の縛りが解消されたさわやかな秋、ちょっと不便な場所だが、三方五湖など若狭町の美しい自然とともにマヤ古代文明に熱い思いをはせる旅を満喫してください。

 (年縞博物館0770・45・0456)。

 ■山根一眞(やまね・かずま) ノンフィクション作家、福井県年縞博物館特別館長。北九州博覧祭北九州市パビリオン、愛地球博愛知県総合プロデューサーなど多くの博覧祭、万博を手がけてきた。近刊は『スーパー望遠鏡「アルマ」の創造者たち』。「山根一眞の科学者を訪ねて三千里」(講談社)などを連載中。理化学研究所名誉相談役、JAXA客員、福井県交流文化顧問、獨協大学環境共生研究所客員研究員、日本文藝家協会会員。

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