【警戒せよ!生死を分ける地震の基礎知識】いまだナゾ多い「深発地震」 小笠原諸島西方沖で、震源が世界一深い751キロメートル観測 - zakzak:夕刊フジ公式サイト

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いまだナゾ多い「深発地震」 小笠原諸島西方沖で、震源が世界一深い751キロメートル観測

 世界で一番深い地震が精密な解析でこの夏に分かった。深さは751キロメートル。これは余震で、本震は深さは680キロメートルでマグニチュード(M)は7・9。本震の深さもいままでの記録を塗り替えた。震央(震源の真上の地点)は小笠原諸島西方沖だった。

 本震は2015年5月に起きたが、震源が深かったので被害は少なかった。小笠原や神奈川・二宮で震度5強を観測したほか震度4だった首都圏を中心に1万9000台のエレベーターが緊急停止し、うち14台で利用者が閉じ込められた。

 だがMが大きく、47都道府県のすべてで有感地震の揺れ(人が感じる大きさ)が記録された。これは気象庁が1885年に地震の観測を開始して以降初めてのことだ。

 地震学では300キロメートルよりも深い地震を「深発地震」としているが、地震はほとんどが浅いところで起きる。1976年から2020年までに記録された約6万回の中・大規模地震で、70キロメートル以深で発生した地震は18%に過ぎず、300キロメートル以深で発生したのは、わずか4%にすぎなかった。

 地球の半径は6300キロメートルもあるから、深発地震でもサッカーボールの縫い目の深さくらいだ。

 世界には何カ所か、深発地震が起きる場所が知られている。

 たとえばロシア・ウラジオストックでは1973年に起きた深さ575キロメートルで地震が起きた。Mは7・2だったが、ロシアでは有感ではなくて日本の太平洋岸で広く震度3を記録した。この地震は日本の東にある日本海溝から潜り込んだ太平洋プレートの先端が起こしたものだ。

 ウラジオストック近辺はMの大きな深発地震がよく起きるところで、このほかにも77年にM7・6、94年にはM7・6、2002年にもM7・2の地震が起きている。

 このほか、日本の南方沖、フィリピン、南米などで起きる。いずれもプレートが地球深くまで潜り込んでいる場所だ。

 深さ数百キロメートルの深発地震で重大な被害を生じることは滅多にない。だが1994年に起きたボリビア深発地震では深さ631キロメートルだったのに死者10人の被害が出た。この地震のMは8・2だった。

 じつは地球で深いところに起きる地震は、まだナゾが多い。深くなるにつれて高温と高圧のため岩石は浅いところのように割れることがなく、いわば柔らかい餅のようになっているはずだからである。それゆえ、どうやって地下深くで地震を起こせるほどの力が溜まるのかはわかっていないのだ。

 しかも地球には、上部マントルと下部マントルの境が660キロメートルにある。下部マントルが密度が高くなるなど、かなり性質が異なっている。上部マントルは主にかんらん石で構成されているが、深さ約660キロメートルになると、かんらん石が結晶構造の相転移を起こしてスピネル構造からペロブスカイト構造に変わる。下部マントルで地震が発生するのは、浅いところの変化とは別の原因によるものに違いない。

 餅をゆっくり引っ張ると伸びて細長いロープのような形になる。一方、勢いよく急に引っ張るとちぎれてしまう。深発地震はこのようなものなのだろうか。

 ■島村英紀(しまむら・ひでき) 武蔵野学院大学特任教授。1941年、東京都出身。東大理学部卒、東大大学院修了。北海道大教授、北大地震火山研究観測センター長、国立極地研究所所長などを歴任。著書多数。最新刊に『多発する人造地震-人間が引き起こす地震』(花伝社)。

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