【警戒せよ!生死を分ける地震の基礎知識】海底噴火で軽石が出続けた可能性 今年8月に起きた福徳岡ノ場の噴火は戦後最大 - zakzak:夕刊フジ公式サイト

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海底噴火で軽石が出続けた可能性 今年8月に起きた福徳岡ノ場の噴火は戦後最大

 この8月に噴火した福徳岡ノ場の噴火は戦後最大の噴火になった。本州から離れた海底噴火だったために、犠牲者もけが人も出さずにすんだ。

 8月13~15日が一番激しい噴火で、噴煙の高さは1万6000メートルに達した。ジェット気流に乗って世界中に火山灰をばらまく高さだ。そのあとは噴火は収まった。

 この火山から放出された軽石や火山灰は1億~5億立方メートルと推定される。東京ドームの80~400個分に相当する。

 しかし福徳岡ノ場の噴火は一段落したものの、海底火山から大量に吹きだした軽石は水に浮く。海流や風に乗って日本各地に流れ着いている。各地にある港を塞いでしまうのだ。

 1400キロメートル離れた沖縄に大量に流れ着いてフェリー、漁業、観光などに大損害を与えている。船はエンジンを冷やすために海水を海面から取り入れているからだ。奄美群島にはすでに流れ着いているほか、伊豆諸島や高知など日本各地に流れ着くのではないかと恐れられている。

 港に軽石が入ってこないようにオイルフェンスを張ると、船の出入りができなくなる。軽石の処理やオイルフェンスなどで地元の悩みは深い。

 火山の噴火で大なり小なり軽石は出てくる。げんに沖縄では35年前にも本州南方の海底噴火から出た軽石が漂着している。ただし噴火の規模が小さく、今回ほどの被害はなかった。また北海道・有珠(うす)山の噴火でも足元の洞爺湖(とうやこ)の北岸が軽石で埋まったこともある。

 マグマが地下深くから地表に噴き出すときに圧力が低下してマグマ内部に溶け込んでいた火山ガスが気化する。冷えて固まると、ガスが抜けた跡に無数の気泡を含んだ軽石になる。

 陸上での噴火ならば噴火が弱まり軽石を噴き上げることができなくなって溶岩になる。だが今回は海底だったため軽石も浮力を受けて出続けた可能性がある。

 どうしてこんな大噴火になったのだろう。

 軽石の分析から玄武(げんぶ)岩が、軽石にわずかに含まれていることが分かった。

 玄武岩は海底付近のマグマだまりでは普通は見られない成分なので、地下深くにある玄武岩が、何らかの原因で海底付近まで上昇したのではないかが疑われている。海底付近のマグマだまりで玄武岩のマグマが混ざったことで、軽石を大量に噴出するような大規模な爆発的噴火を引き起こした可能性がある。

 最終的には軽石は沈んでいくが、軽石がどの程度の期間をかけて沈んでいくかは正確には分かっていない。しかし1~2カ月の間に軽石は沈んでいって、騒ぎは収まると見込まれている。

 一方、福徳岡ノ場では8月の噴火後、直径約1キロメートルの馬蹄(ばてい)形の2つの新島が確認されていた。

 しかし、10月までには東側の新島が消えた。11月には西側の島の面積は約0・3平方キロメートルあったものが3分の1ほどになっている。

 こちらも波に削られて、いずれはなくなると予測されている。新島は軽石や火山灰が堆積したものだからだ。日本に新しい領土が増えることはなさそうだ。

 ■島村英紀(しまむら・ひでき) 武蔵野学院大学特任教授。1941年、東京都出身。東大理学部卒、東大大学院修了。北海道大教授、北大地震火山研究観測センター長、国立極地研究所所長などを歴任。著書多数。最新刊に『多発する人造地震-人間が引き起こす地震』(花伝社)。

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