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【日本の解き方】国債「先行き不安」は債券市場関係者だけの不安 国民全体にはハッピー

ニュースカテゴリ:政治・社会

【日本の解き方】国債「先行き不安」は債券市場関係者だけの不安 国民全体にはハッピー

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 「日本国債が記録的な乱高下を演じており、不安が再燃している」という報道が19日付の米ウォールストリート・ジャーナル紙であった。この記事にある「乱高下」や「先行き不安」というのは本当なのだろうか。

 記事の文中では、「18日の国内債券市場では、長期金利の指標となる10年国債利回りが0・41%と、先月に付けた過去最低の0・195%の2倍超の水準へ上昇した」とあり、事実関係は正しいといえば正しいが、「2倍超」とは笑ってしまった。

 実は、記事の中にある2013年から2年間における各国の国債利回りのグラフをみても、日本国債が乱高下しているようにはどうしてもみえない。そもそも「2倍超」になったのかどうかも、目をこらしてもよくわからない。

 長期金利の形成の一般論をいえば、将来にわたる短期金利の予想の積み重ねである。将来の短期金利がどうなるかの予想に従って上下するため、将来予想の動きで変動しやすい。

 長期金利の変動幅は短期金利に比べると小さいが、長期債は長期金利の変動によって価格が変化し、償還までの期間が長い方がより影響を受ける。このため、長期金利の上昇は、長期債の価格を大きく低下させるので、債券関係者にとっては死活問題になる。

 歴史的にみれば、長期金利の指標となる国債金利の水準は経済成長率とほぼ同じだ。日本のデータだけみていると、最近20年もデフレだったので、経済成長率が低くマイナスにもなっていた。長期金利はさすがにマイナスにはならないので、結果として長期金利のほうが経済成長率より高かったが、世界各国で長い目でみればほぼ同じである。

 ただ、これまでのデータでは、経済の回復に少し遅れて長期金利は上がり出す。時折、先取りしすぎて一時的に景気回復の前に上がり出すこともある。

 債券関係者は、この景気回復の前の一時的な上昇を心配している。しかし、世間一般にとっては、景気回復の方向であればいい。債券関係者と世間一般のズレがあるので、債券関係者の心配を記事にすると、世間一般からみれば、ちょっと的外れの記事になる。記事にある先行き不安とは、経済の先行き不安ではなく、債券相場だけの先行き不安である。

 金融機関では、デフレで本業の貸出が思うように伸びない中、債券部門が金利低下を背景に収益を支えてきた。債券関係者はデフレ下では自分たちの存在価値があったが、デフレを脱却すれば本業の貸出部門が盛り返してくる。

 債券関係者は、その焦りが出て、乱高下や先行き不安を唱えるが、それはまさしく経済が良い方向に向かっている証しでもある。

 デフレでは債券部門が優勢であったが、脱デフレでは主役交代になり、金融機関全体としてみれば収益は上がる。しかも、経済全体でみればいい方向なので、国民全体にとってはハッピーである。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

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