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【日本の解き方】憲法改正と財政規律条項、経済苦境時の緊縮は論外

ニュースカテゴリ:政治・社会

【日本の解き方】憲法改正と財政規律条項、経済苦境時の緊縮は論外

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 自民党の船田元(はじめ)憲法改正推進本部長は、憲法改正について、「来年秋から再来年春の実現を目指す」としたうえで、最初に取り組む改正項目について、環境権と緊急事態条項のほか、財政規律条項の創設を挙げた。改正項目の選定について安倍晋三首相(自民党総裁)から『お前に任せる』と一任されたという。

 改正項目の選定は船田氏に任されたものの、これからボチボチと党内外で議論していくわけだ。手順として、今の通常国会の衆院憲法審査会で、第1章から第9章まで議論が始められ、国民の意見を募るため地方公聴会も何カ所かで行う予定である。そうした議論の中で、さまざまな論点が出されるはずなので、今の段階での船田氏の論点は特段の意味はない。

 早ければ来年秋、遅くても再来年の春には憲法改正の発議を行うことを目指しているが、それでも来年夏の参議院選挙の後である。憲法の話は、こうしたロードマップを頭に入れながら、聞かないと、全体の流れが見えにくくなる。

 その中で、船田氏が選んだ環境権、緊急事態条項と財政規律条項はいずれも議論しやすいものである。特に、与党の公明党にとって、これらの条項は公明党の主張にも合致しており、議論を拒むことはできない。

 憲法改正は9条問題になると、護憲勢力にとっては議論さえ拒むという雰囲気がある。そこで、環境権、そして国会や内閣等の統治機構関係で代表的な論点である緊急事態条項と財政規律条項を先行させることで、憲法を議論する場を設定することが重要になってくる。

 日本では、憲法改正のアレルギーがある。西修氏監修の『世界地図でわかる日本国憲法』などによれば、主要国の改正回数は米国18回、カナダ18回、ドイツ52回、ベルギー50回、アイルランド22回、イタリア17回、オーストラリア8回、スイス6回、フランス20回となっている。

 しかし、日本はまだ1回も憲法改正がなく、世界の憲法から見てきわめて異例だ。世界の多くの国の標準からみると、憲法9条以外の国会や内閣等の統治機構に関するところで改正を行えないというのでは、時代の動きについてゆけない。統治機構条項としては、緊急事態条項と財政規律条項のほかにも、1院制や道州制などの大きなタマもある。

 この中で財政規律条項についてみると、財政規律が不要とすると、政府のムダ遣いが許されてしまうので、あり得ない。というわけで、憲法に財政規律条項があるのは、何も問題ない。

 ただし、憲法はプログラム法(政策実現の手順や日程を定める法律)なので、憲法に財政規律条項ができたとしても、憲法ではない法律が必要で、具体的な規定はその法律に基づく。

 そこで財政規律を保つために、何をやるべきかという点が重要だ。政府のムダ撲滅は当然として、経済苦境時の緊縮財政は経済を傷めて元も子もないので、そこまで規定したらまずい。

 こうした議論は、憲法改正後に制定される実定法での話であるので、憲法改正とは切り離して議論すべきである。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

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