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審判殴ったコンゴ留学生の自主退学「やり切れない」 あってはいけない行為だが…

 全九州高校体育大会のバスケットボール男子準決勝で、コンゴ民主共和国の留学生が審判を殴った問題で、学校に人種差別的な電話などが殺到し、留学生は予定を早めて先月中に自主退学、帰国したという報道に接し、何ともやり切れない気持ちである。

 スポーツにおいて審判を殴るというのは、あってはいけない行為だが、15歳の少年の過ちだ。

 留学生は家族から離れ、異文化、異言語の環境のもと、孤独感から非常に強いストレスを募らせていることが多く、特段のケアが必要だ。それは単なるリスク管理という類いのものではなく、留学生が日本に溶け込むことは、親日家、知日家を増やすという、草の根外交でもある。

 その意味で高校留学生の多くが、日本語をまったく理解しないまま高校を卒業し、さらにその一部は日本の大学に進学できてしまっている現状については、より実効性の高い基準とその運用が求められるだろう。もっとも、日本人のトップアスリートでも中学以降、まったく勉強をすることなく、大学まで卒業してしまう例が多々あることがわかっているから、競技さえできればよいとする風潮自体、改める必要がある。実際、来春に発足する日本版NCAAは、学業との両立のための基準を設置する予定で、そこに期待したい。

 外国人との共生、多様性の受容の必要性はスポーツに限らず、「崇高な理想」でもなく、実際に起こっている現実だ。

 ひとつは労働力不足。現時点は勿論のこと、将来において若年労働力の不足がより深刻になることが想定される中、政府は6月半ば、外国人労働者の受け入れ拡大方針を表明した。実際、コンビニやファストフードなど、私たちの身の回りでも実感できるように、外国人労働者の力なしでは成立しない業界が多々ある。

 もうひとつは、日本は既に移民国家であるという現実だ。移民流入の数はOECDによれば、ドイツの200万、アメリカの100万、イギリスの40万に次ぐ世界4位の39万人で、上記の政府方針によれば、2025年には50万人に到達する。

 特殊性の高い言語と、暗黙知いっぱいの文化であることを免罪符として、外国人とは「助っ人」として必要最小限に関わるメンタリティでなく、今以上に、共に生きる、つまり、多様性を受け入れる必要がある。

 悲しい結末となった本件は、外国人との共生社会は他人事ではなく、いまそこにある現実のものとして、その泥臭い、人間的なプロセスへの覚悟を改める契機としたい。ビジネスであろうとスポーツであろうと、世界から逃げていたら世界には届かないのだから。

 ■小林至(こばやし・いたる) 1968年1月30日生まれ。東大から1991年ドラフト8位で千葉ロッテに指名され入団。史上3人目の東大卒プロ野球選手となったが、1軍登板なく93年退団。その後、米コロンビア大で経営学修士号取得。02年から江戸川大学助教授。05年から14年までソフトバンク球団取締役を兼任。現在、江戸川大学教授、専門はスポーツ経営学。

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