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ZOZO前澤氏の球界参入を阻む「保守の壁」 買収も新球団設立も困難か?

 プロ野球球団の保有が会社のブランド力を高めることに絶大な威力を発揮することは、良く知られている。古くはロッテやオリックス、最近ではソフトバンク、楽天、DeNA。いずれもプロ野球への参入が、その後の飛躍の契機になった。

 新進気鋭の経営者である前澤友作氏が日本野球機構(NPB)への参入希望を表明したことは、そのことを改めて世に知らしめた。野球業界にとっては喜ばしいことだろう。また、一代で一兆円企業を築いた経営手法で、プロ野球ビジネスに新風を吹き込んでくれることに期待したいファンも多いことだろう。

 しかし、実際に参入するとすれば、方法は既存球団の買収、もしくは新球団を立ち上げるしかなく、どちらも困難で、なんとももどかしい。

 まず、既存球団の買収となると、売る意思のある相手の存在が大前提となるが、現在の12球団を見渡しても、私の知る限り、そういう意図を示している球団はない。さらに日本の場合は、親会社の経営難やチームの絶望的な低迷や不人気などが背景だった歴史ともあいまって、世間から「身売り」などというネガティブな捉えられ方をされがちで、そのことがより売却を困難にしている。

 前澤社長がファンであると公言し、本拠地球場の命名権を購入している千葉ロッテにしても、確かに12球団の中では観客動員、チーム成績ともにやや低迷しており、改善の余地は少なからずあるが、ロッテはグループ売り上げ6兆円を超える世界的大企業であり、パ・リーグ最古参の親会社として、良い時も悪い時も球界を支えてきた自負があるだろう。

 新規参入については、自民党が2014年にまとめた「日本再生ビジョン」でうたわれた16球団構想が有名だが、球団拡張(エクスパンジョン)は球界内外で将来の可能性として語り継がれてきたことではある。

 こういう夢のある話は、私も大好きだが、現実には難しいだろう。なぜなら球団数の増加が、人口減と地方の疲弊にあえぐ日本において、市場の拡大につながると確信を持つのは極めて困難である、というのが、少なくとも私が球界内部にいたときの球界の見解で、それが変わったとは聞いていない。本稿を読んで、なんと保守的な世界だ、と嘆息するファンもいるかもしれない。構成員の意思によって運営されている団体は、多かれ少なかれ、そういうものであるが、不可能だと言っているわけではない。

 歴史と伝統に彩られた会員制クラブならではの保守性を理解しつつ、国境なきインターネットの世界で成功を収めた英知とエネルギーをもって、NPBひいては野球界に新たな付加価値をもたらしてほしいという、そんな思いである。

 ■小林至(こばやし・いたる) 1968年1月30日生まれ。東大から1991年ドラフト8位で千葉ロッテに指名され入団。史上3人目の東大卒プロ野球選手となったが、1軍登板なく93年退団。その後、米コロンビア大で経営学修士号取得。02年から江戸川大学助教授。05年から14年までソフトバンク球団取締役を兼任。現在、江戸川大学教授、専門はスポーツ経営学。

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