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レスリング、ボクシング、体操… アマチュア競技団体でガバナンスが機能しない理由

 アマチュア競技団体において、ガバナンス(組織統治)の欠如に基づく不祥事が続いている。レスリング協会のパワーハラスメント、ボクシング連盟の不正疑惑、そして体操協会におけるパワハラ疑惑と、いずれも、権限と影響力を持つ一部の人間が独裁的に組織を支配する封建的な体質が世にさらされ、批判を受けている。

 もっとも、スポーツ界でガバナンスが機能しないのは、今に始まったことでもなければ、日本固有のことでもない。

 IOC(国際オリンピック委員会)における五輪招致に伴う票の買収は、ソルトレーク(2002)や長野(1998)について一大スキャンダルとなったが、その後もロンドン(2012)、東京(2020)の招致に伴い集票工作が報じられてきた。

 FIFA(国際サッカー連盟)は、2人の権力者による支配が50年間も続き、集票工作はもちろん、全権を掌握した独裁者がやりそうなあらゆる汚職に手を染めていたことが発覚。世界中を仰天させた。

 スポーツ団体においてガバナンスが機能しにくい大きな理由は、市場にさらされていないからだろう。

 市場とはつまり競争であり、私たちが住む資本主義の社会においては、多くのことが市場の「神の手」によって決められる。分かりやすいところでいえば、企業の価値を示す株価がそうである。企業は市場で高く評価してもらうためには、同業他社との競争に勝ち、収益をあげる必要がある。そして収益をあげるために、経営者は優秀な人材を雇い、良い商品を生み出し、顧客を増やす必要がある。それができない経営者は、株主から退出を命じられるし、一方で利益をあげるために従業員に十分な給与を払わなかったり、法に触れるような行為を指示すれば、いまであれば内部告発で即アウトだし、そうでなくとも、優秀な人材は働き口を別に求めることになるだろう。

 ところがスポーツの場合は、1つの競技に対して1つの団体しかないため、より良い商品やサービスを生み出すために競争するということがない。末端のレクリエーションレベルの競技者であればともかく、頂点に近いアスリートともなると深刻な問題である。日本の体操選手であれば、日本体操協会に所属するしか、頂点を目指す手段がないのである。

 実は、こうしたピラミッド型のアマチュア・スポーツ組織の権力の集中と腐敗は、アメリカのプロスポーツ団体がよく指摘していることである。アメリカのプロスポーツ団体は、いずれもライバルリーグとの競争にさらされ、勝利してきた歴史を持つ。そのガバナンスは、たとえばコミッショナー率いる中央統括機構は各球団の厳しい目にさらされており、成果を出せなければ退出を余儀なくされる。日本のプロ野球はもっと厳しく、コミッショナーにほとんど権限を与えていない。

 そんなことを言ったって、現実にはIOCは1競技につき1団体しか認可していないし、IOCが主催するオリンピックが目指す頂なのだから仕方ないではないか、とおっしゃる向きもあろう。その通りである。だからこそハンパない厳しいガバナンスの体制を敷かなければいけないのだ。

 ■小林至(こばやし・いたる) 1968年1月30日生まれ。神奈川県立多摩高から東大へ進学し東京六大学野球で活躍。92年、千葉ロッテにドラフト8位で入団。史上3人目の東大卒プロ野球選手となったが、1軍登板なく93年退団。翌年から2000年まで米国に住みコロンビア大で経営学修士号(MBA)取得。02年から江戸川大学助教授。05年からソフトバンク球団取締役を兼任し、10年からはフロント実務の責任者。14年限りで退団。現在、江戸川大学教授、専門はスポーツ経営学。

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