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【元巨人 クロマティが斬る】殿堂入りは確実…イチローがメジャーにもたらしたもの

★(9)

 マリナーズのイチロー外野手(45)が将来、メジャーの殿堂に入るのは確実だ。イチローのMLB(米大リーグ)への貢献は目を見張るものがある。パワーがなくても成功できること、俊足と選球眼のよさだけでスーパースターになれると証明した。

 年間200安打以上10度は、あのピート・ローズとイチローだけ。年間最多安打記録(262本)を樹立し、メジャーだけで通算3000安打を突破。日米通算で4000安打を超えた。メジャーで首位打者2回、MVP1回。

 日本で初めてフル出場し首位打者に輝いた1994年から、メジャーで戦える能力を備えていた。技術があり、野球に対する独特の姿勢を示した。グラウンド外ではだぶだぶのバギーパンツを履き、ラップミュージックを聴いた。「俺は他とは違う。日本よりも大きな存在だ」と誇示するかのようだった。

 イチローがメジャーで成功できたのは、メジャーにアジャスト(適応)できたからだ。日本では右足をあげる“振り子打法”だったが、これをやめた。日本なら投手の球にスピードがなく、振り子でも対応できたが、マリナーズに移籍すると封印。メジャーの剛速球に反応できるようにした。

 同時にゴロを転がす打法に変えた。日本では鋭いライナーを飛ばす選手だったが、メジャーでは抜群の俊足を生かし、内野にゴロが転がればセーフになった。

 イチローがMLBにもたらしたものは非常に多い。試合前のストレッチと準備運動もその1つだ。アメリカ人にとっては過去に見たことのないものだった。シアトルにやってきた相手球団の選手は、イチローの一連の動きにくぎ付けになった。オン・デッキ(ネクスト・バッターズ・サークル)での、屈伸運動をまじえたイチローのルーティンもメジャーリーガーには目新しかった。

 その気になればもっとホームランを打てただろうが、そうすると打率が下がる。ハンド・アイ・コーディネーション(目で捕らえたものを手に連動させる能力)は「すごい」の一語だった。

 そんなイチローにも問題はあった。メジャーの選手たちはイチローが個人成績だけに固執していると考えていた。イチローの高額のサラリーに関して不満を漏らす選手も多かった。

 この状況は私にも理解できる。私も最初に巨人入りしたときに、多くの人の反発を受けた。チームの誰よりも年俸が高く(1億8000万円でスタートし、MVPを獲得した1989年のオフには2億9000万円)、嫉妬されたものだ。

 特に入団直後にあまり打てなかったこともあって、いろいろ言われた。チームに受け入れられるまでに時間がかかった。チームメートとのコミュニケーションは非常に大切で、当時の私にとって最大の課題だった。私はある意味、自分がチームの25分の1(ベンチ入り選手は25人)に過ぎないと考えることも大切だと思うようになっていった。次回もイチローを取り上げる。(構成 ロバート・ホワイティング)

 ■ウォーレン・クロマティ(Warren Cromartie) 1953年9月29日生まれ。米フロリダ州マイアミビーチ出身。大リーグのモントリオール・エクスポズから83年オフに巨人入団。89年に打率・378で首位打者とMVPに輝き、7年間在籍した巨人で球団史上最強の助っ人といわれる。外野席のファンに「バンザイ」を促すパフォーマンスでも有名。左投左打。現在はモントリオールにMLBのチームを呼び戻す運動のリーダー。2年前から東京在住。

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