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メディア価値、地域経済振興… 春季キャンプが「メジャー風」にならないワケ

 本稿を昼下がりの自宅書斎で記している。かたわらのテレビで流れているキャンプ中継、加入しているCATVのチャンネルを繰ってみたら中継局数は8。ネット限定で配信している2球団を加えると、10球団のキャンプをライブ映像で楽しむことができる。私が千葉ロッテの選手だった1990年代前半からすると異次元の世界だが、ホークスのフロントにいた4年前でも、ここまでの広がりはなかった。

 90年代前半は、巨人の公式戦が全試合、全国中継されていた時代である。BS放送の黎明期で、CS放送はなかったこの時代、千葉ロッテの最大の露出チャンスは、春季キャンプ地の鹿児島・鴨池球場に巨人を迎えるオープン戦で、全国中継されるこの試合は当時のロッテにとって、公式戦を含むすべての主催試合の中で最大の興行だった。そんな大昔はともかく、最近でも私がホークスに在籍した最終年(2014年)でも、キャンプ中継はあっても週末、球団数も半数に届いていなかったと思う。

 MLB(米大リーグ)の情報が日常的にお茶の間に届くご時世を反映して、「なんで日本のキャンプは、そんなに早く始まるの?」という声が巷で聞かれるようになった。MLBは全体集合が2月最終週で、練習期間はせいぜい数日、それも連係プレーの確認程度で午後はゴルフ。3月に入るや否やオープン戦に入る。日本は前半の10日-2週間は練習。それも10時-15時くらいまで全体練習で、その後個人練習が続く。

 MLBのキャンプを経験した外国人選手が日本のキャンプを目の当たりにすると、まず驚き、それでも最初は“郷に入りては郷に従え”と我慢するが、2年目ともなると、その長さに辟易して不満を漏らすようになる。何年か活躍し主力となった外国人選手には、遅れての参加を認めるのが慣例だ。

 確かに、シーズンへ向けての準備という点では、2月1日からやる必要はない。しかし風物詩として定着し、コンテンツ価値が増しているいま、アメリカの動向に左右されがちなわが国でも、この風習は変わらないだろう。先に記したメディア価値はもちろんのこと、繁忙期ではない2月に、ファンや報道陣を多数連れて来る春季キャンプは、地域経済にとってなくてはならない存在となっている。また、キャンプでは選手とファンの距離が近く、練習後に選手が1時間サインしたりするなどの交流が日常的に行われる。

 今季からMLB風の硬いマウンドを採用する球団がさらに増えるようだが、キャンプだけはMLB風にはならないだろう。

 ■小林至(こばやし・いたる) 1968年1月30日生まれ。東大から1991年ドラフト8位で千葉ロッテに指名され入団。史上3人目の東大卒プロ野球選手となったが、1軍登板なく93年退団。その後、米コロンビア大で経営学修士号取得。02年から江戸川大学助教授。05年から14年までソフトバンク球団取締役を兼任。現在、江戸川大学教授、専門はスポーツ経営学。

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