【実況・小野塚康之 時代を超える名調子】コロナ吹き飛ばす!広島・堂林の爽快感 へこたれない精神でみんなが元気に (1/2ページ) - zakzak:夕刊フジ公式サイト

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【実況・小野塚康之 時代を超える名調子】コロナ吹き飛ばす!広島・堂林の爽快感 へこたれない精神でみんなが元気に (1/2ページ)

 名だたる歴戦のストッパーたちがいつもと違う。タイガース・藤川球児が、ベイスターズ・山崎康晃が被弾し、苦悶(くもん)の表情を見せほぞをかむ。どのチームも勝利に向かうクロージングストーリーを例年通りには描けない。カープは抑え不在、ドラゴンズは岡田俊哉が絶不調、スワローズ・石山泰稚も失点が続き、ジャイアンツ・デラロサは故障で戦線離脱。異例の6月開幕から4週間が経過しようという時期でこんな状態だ。チームに安定をもたらすはずの“守護神たち”の苦悶の姿が2020年プロ野球シーズンの難しさを象徴している。

 開幕延期、活動中断による自主練習期間などで心身ともに実践不足に陥ったことが多くの選手たちに暗い影を落としている。重い気分になる。

 そんな中で開幕から体調万全、スカッと爽やかに大活躍しているのが、カープの堂林翔太だ。7月8日のベイスターズ戦の8回、パットンから放った“逆転満塁ホームラン”にはコロナウイルスの存在を一瞬吹き飛ばしてくれるような爽快感があった。「こういう大仕事が似合う男なんだ!」と改めて思った。この夜、アーチの映像が何度も流れるのを見ながら思い出す…

 堂林は中京大中京時代、2009年の第91回選手権大会を制した全国の主役だった。しかし決勝戦は大量リードの9回土壇場、日本文理の猛追を受け10対9と土俵際まで追い込まれての薄氷を踏む勝利だった。この試合先発して途中降板して9回2度目のマウンドに上がったが、あと1球から打ち込まれ再度交代、胴上げ投手になれなかった。もう1イニングあれば形勢逆転されたのではと周囲が思うようなゲームで、最後いい形まで迫って敗れた日本文理は“笑顔の準優勝”と称され、中京大中京は、エースの堂林が優勝インタビューでふがいない戦いに謝罪の言葉とともににじませた“悔し涙の優勝”ともいわれた。

 しかし、堂林は格好の良いプレーヤーだった。投手であり、守ればショートでも外野でも。投球は速く、打撃は飛距離が出る。長身でスマートなイケメン、プロ野球でスターの座に就くことが約束されているような選手だった。この年のドラフト2位で野手として広島に入団した。翌年から私はNHK広島に勤務した。当時、前田健太投手が日本で絶頂時だったが打線は今一つでチーム成績は上がらず低迷していた。

 その中で3年目の2012年、堂林が輝き始めた。144全試合に出場し14本塁打を記録したが、さらに大きな選手へという期待はふくらむ一方で、当時監督だった野村謙二郎氏は常にマンツーマンで早出、居残りはもちろん、全体練習オフの日でも付き合い鍛えぬいていた。まずはティーバッティングでトスを上げインパクトのチェック、ロングティーでは10発連続でスタンドに打ち込むまで許さない。

 続くフリーバッティングでも野村氏がマウンドに立ち投げ込みつつ打球の質を求める。引っ張ってドライブが掛かればファウルになる。ストレートに近い弾道を生み出すスイングを教え込む。レベルが高く身に付くのは難しいのだろうが理想と夢を追う2人の姿に見えた。どちらも譲らない気迫があふれていた。だから中々終わらない。整ったマスクの堂林の頬を大量の汗が伝う。野村氏のアンダーシャツの赤は血が滴るかのようにさえ見えて来る。一度ベンチの中に消えこれで終了かと思うとまた出て来る。見応えがあった。やはり2人は濃いものがある。

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