【スポーツ随想】出雲駅伝中止で見えた「全日本&箱根」開催の難しさ 規模の大きさがケタ違い、“同調圧力”も - zakzak:夕刊フジ公式サイト

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出雲駅伝中止で見えた「全日本&箱根」開催の難しさ 規模の大きさがケタ違い、“同調圧力”も

 先週、出雲全日本大学選抜駅伝(島根)の中止が発表された。全日本大学駅伝(11月1日)、箱根駅伝(来年1月2-3日)と並ぶ学生3大駅伝の初戦で、中止は台風の影響で取りやめとなった2014年以来2度目だ。

 今年の箱根でタイトルを奪回した青学大の原晋監督は「学生は駅伝を走りたい一心で規則正しい生活をしているのに、残念でならない」などとコメントした。

 6区間45・1キロの出雲は、8区間106・8キロの全日本や10区間217・8キロの箱根に比べれば距離が短いスピードレース。人口約17万人の小さな市にとっては、ちょうどよい規模で市民あげての一大イベントになっている。特にレース後、市内のワイナリーで開かれる地元有志による恒例のさよならパーティーは、おいしいワインが楽しめるとあって待ちかねている選手や関係者も多い。全日本や箱根に向け、他大学のスタッフとグラスを傾けながらの情報収集に絶好の場でもあった。

 主催の出雲市によると選手、関係者の移動リスクや、感染したら重症化の恐れもある65歳以上のボランティアが多いことなど、大会に関わる人々の安全を最優先したという。「特にネックになったのは、2500人のボランティアのうち半数が高齢者であること。若いみなさんに変えることも困難。断腸の思いで中止にした」と長岡秀人市長は話した。

 もっとも、島根県は新型コロナウイルス感染者数が1日現在29人で、下から数えて5番目という少なさ。そこへ「Go To トラベル」から唯一除外され、感染者も1万人を突破した東京から選手、スタッフ、報道関係者などが大挙して押し寄せる。医療体制など考えれば「今年ばかりは勘弁してほしい」が地元の本音で、感染の極端な地域格差が中止の大きな原因だったかもしれない。

 出雲の決断がこの先の駅伝に与える影響は大きい。「いま多くの若者がチャレンジの機会を失っている。若者にチャンスを与えてほしい」と、原監督は全日本や箱根の中止を危惧している。

 両大会とも選手やスタッフ、沿道に集まる市民やボランティアの数など比べ物にならないほど多いだけに、主催者としても「開催」の意思表示をはっきりできないもどかしさはあるだろう。

 「他のスポーツも同じだが、同調圧力というのか、前がどうするのかを見て判断するような感じだ。何といわれても自分だけはやるんだと、どこかで流れを切らないと、箱根までズルズルいってしまうのではないか」と、ある陸上関係者。

 勇気ある主催者が出るかどうか。駅伝ファンは気をもむばかりだろう。 (作家・神谷光男)

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