【新・悪韓論】検察は「怒れる民心のため」から「文在寅のため」へ 次の標的は「財閥」…公取委長は「狙撃手」の異名

ソウル中央地検

 韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領の支持率は81・6%だ。同大統領の一挙手一投足を、保守系紙の枠から離脱した中央日報を含む韓国メディアが「さわやかな新風」とばかり囃(はや)し立てていることが大きい。しかし、その人事を見れば、早くも独善と強引さが現れている。そして、公正取引委員会と検察を素早く掌握したことは、同政権の次の大きな狙いが「財閥たたき」にあることを示している。

 ソウル中央地検長は、韓国の検察の中では、検事総長に次ぐ事実上ナンバー2のポストだ。そこに、文氏は大田(テジョン)高検の平検事を任命した。高検の検事とは閑職だ。任命された尹錫悦(ユン・ソギョル)氏は2013年、国家情報院の大統領選挙介入事件の捜査で、上司の命令を無視して国情院職員を逮捕したことで左遷された人物だ。

 もとより、政治事件だった。その渦中で「正義を貫いた検事」との評価もあるだろうし、「異様に野党に肩入れした検事」とも言えるだろう。

 ともかく、その検事を、検察の序列(=司法試験の合格年次やポスト歴)を無視して、ナンバー2に起用したことは、「彼より年次が上の検事はとっとと辞めろ」と言うようなものだ。早速、法務次官と、最高検次長が辞表を出した。

 韓国の検察は常に強い者の味方だ。「朴槿恵(パク・クネ)政権の番犬」から一夜にして、「怒れる民心の走狗」に変わった。しかし、「怒れる民心」に乗って政権を手にしてしまえば、もう狡兎死良狗烹(=狡兎死して、良狗烹《に》らる)なのだろう。いや、韓国の検察は「良狗」ではない。せいぜい「猟狗」だが、検察の立ち位置を、もっと左にさせるための人事といえる。

 韓国の法制上、検事は大統領による認証官だが、その具体的な人事は法相が検事総長の意見を聴いて建議することになっている。今回の人事は、その手続きを無視して断行された。発表も法相ではなく大統領だった。「朴槿恵のための検察」→「怒れる民心のための検察」→「文在寅のための検察」という流れだ。

 文氏は人事発表にあたり、「現在のソウル中央地検の最大の問題である崔順実(チェ・スンシル)ゲートの追加捜査と関連事件の控訴維持を円滑に遂行する適任者を昇進させ、任命した」と述べた。“逆指揮権”発動とも取れる言葉だ。

 これに先立ち、文氏は、司直の総括役である民情首席秘書官に、左翼の刑法学者として知られる●(=恵の心を日に)国(チョ・グク)ソウル大教授を任命した。そして、韓国では「経済警察」と呼ばれる公正取引委員会の委員長に金尚祚(キム・サンジョ)漢城大教授を指名した。金氏はかねて「財閥狙撃手」との異名を取る。

 「狡兎」(朴槿恵氏)は一段落したから、次の標的は「狡兎の共犯」である財閥だ。これをたたくことによって「政権の浮揚力=ロウソク革命の熱気」を維持・高揚できる。「暗くて赤い韓国」を実現するための司直の人的体制がまず発足したのだ。

 ■室谷克実(むろたに・かつみ) 1949年、東京都生まれ。慶応大学法学部卒。時事通信入社、政治部記者、ソウル特派員、「時事解説」編集長、外交知識普及会常務理事などを経て、評論活動に。主な著書に「韓国人の経済学」(ダイヤモンド社)、「悪韓論」(新潮新書)、「呆韓論」(産経新聞出版)、「ディス・イズ・コリア」(同)などがある。