【新・悪韓論】言論の自由が消滅の初期症状 文大統領「異見」を仲間内には「義務」と言い、外部が言えば“総口撃”

 日本でも時として使われる熟語に「異見」がある。「異なる内容の意見」のことだ。韓国語にも「意見」(発音=ウィギョン)と、「異見」(同=イギョン)があり、「異見」は頻繁に使われる。

 文在寅(ムン・ジェイン)大統領は5月25日の首席秘書官・補佐官会議で、「私の指示に異見を出すのは(会議出席者の)義務だ」と述べた。が、その舌の根の乾かぬ内に始まったのが、雇用政策に関して「異見」を述べた経済人に対する政権側からの“総口撃”だった。

 仲間内なら「異見を言え」だが、“反ロウソク革命分子”が政権の政策を批判するのは許さないということだ。「暗くて赤い韓国」で「言論の自由」が失われていく初期過程ではあるまいか。

 最高権力者があえて、「私の指示に異見を出すのは義務だ」と指示するとは、この国で開かれる会議そのものが、実は根本的な欠陥を抱えているからだろう。少なくても、「活発な議論」と「指示による異見の表明」では全然違う。きっと、「異見」にこと借りたゴマスリが、文体制の“会議文化”になっていくのだろう。

 政権がいま問題にしているのは、首席秘書官・補佐官会議と同日に、韓国経営者総協会の金栄培(キム・ヨンベ)副会長が述べたことだ。文政権は「非正規職の正規職化」を大きな政策目標に掲げているが、金氏は「さまざまな人材活用策を考慮せず、(正社員・非正規社員を)良いとか悪いとか言う誤った二分法で判断してしまえば、逆に対立をもたらし雇用を減少させるかもしれない」と語った。

 経済界としたら、至極当たり前の話だ。だが、政権サイドは瞬間湯沸かし器のように反応した。

 大統領の文氏自身が「韓国経営者総協会は社会に二極化をもたらした張本人であり、責任感を持って真摯(しんし)な省察と反省をまずは行うべきだ」と反論した。

 政権交代の引き継ぎ業務を担当する国政企画諮問委員会の金振杓(キム・ジンピョ)委員長は「(経済界は)圧力を感じるときはもっと感じるべきだ」と述べた。きっと、圧力をかけているのに、気が付かないのかという意味なのだろう。

 同委のスポークスマンも「一言の反省もなく、なおかつ非正規社員の存在があまりにも当然のことのように語るのは非常に安易な考え方であり、企業の立場だけを代弁する偏狭な発想だ」と続けた。

 韓国の非正規職は2016年末時点で644万人。その95%は中小企業に属すると推計されている。

 財閥系大手で働く非正規職の賃金は中小企業の一般正規職より高給で、中小企業の非正規職の賃金は財閥系大手の非正規職の6割ほど-日本人には、どうにも想定すらしがたい企業格差がある。

 しかし、だからといって、「ロウソク革命の精神」をもって非正規職を全員、正社員に登用したら、韓国の中小企業は続々と倒産してしまうだろう。が、そんな予測すら大声では語れないような「外部には異見なしの社会」が近づいているのではあるまいか。

 ■室谷克実(むろたに・かつみ) 1949年、東京都生まれ。慶応大学法学部卒。時事通信入社、政治部記者、ソウル特派員、「時事解説」編集長、外交知識普及会常務理事などを経て、評論活動に。主な著書に「韓国人の経済学」(ダイヤモンド社)、「悪韓論」(新潮新書)、「呆韓論」(産経新聞出版)、「ディス・イズ・コリア」(同)などがある。