【朝日新聞研究】甲子園ボール投下の濃すぎる自社色 スポーツ精神に合致しない社旗の誇示、高校野球さえも反戦利用

全国高校野球選手権大会の開会式=8月8日、阪神甲子園球場

★(5)

 8月8日、台風の影響で1日遅れで全国高校野球選手権大会が、阪神甲子園球場(兵庫県西宮市)で開幕した。始球式には、長嶋茂雄氏の次女でスポーツ・キャスターの長嶋三奈さんが登場した。女性が務めるのは24年ぶりとのことであった。

 この始球式は一般の始球式と異なり、使用するボールは朝日新聞のヘリコプターによって、上空から投下されるのが最大の特徴である。このボール投下については、朝日新聞の8月15日付のデジタル版で、動画を含めて紹介されている。

 それによると、1923(大正12)年の第9回大会における、朝日新聞の飛行機による祝賀飛行からはじまり、戦後しばらくは米軍機が行ったという。52年から朝日新聞機により再開され、56年からヘリコプターが使われるようになった。

 今年は導入されたばかりの「あかつき」号が使われ、「朝日放送のヘリコプターが並んで飛行しながら空撮し、球場の大型スクリーンにその模様が映し出された」とあるから、デジタル版の動画で見られるのが、それなのであろう。

 ボールの投下はボールだけを投下するのではない。ボールには朝日新聞の社旗が結びつけられており、それがひらめきながら落下するわけである。しかも投下の目標として、二塁ベースの後方には、ここにも朝日の社旗が広げられている。なかなか考えられた見事な演出と言えるだろう。

 ただし、ここで疑問を感じざるを得ない。これは果たして高校球児の祭典にふさわしい、セレモニーなのであろうか。

 ボールにも社旗をつけ、地上にも社旗を置く。つまりこれは徹底した朝日の社旗の誇示である。それは朝日新聞という組織の誇示であり、つまり宣伝である。いくら主催者といえども新聞社という一私企業であり、高校生のスポーツイベントの精神に合致しているとは、とても思えない。

 また甲子園の大観衆の上空を、ヘリコプターが飛行することは、万一の場合を考えると、その安全性に危惧を抱かないわけにゆかない。しかも朝日放送のヘリコプターと並行飛行している。

 別に一般的な始球式のやり方で良いではないか。それとも、朝日新聞のヘリコプターは、オスプレイと違って、絶対に墜落しないのであろうか。

 なお、大会が終了した翌8月24日の社説「『甲子園』閉幕 歴史の重みを受け継いで」は、実に興味深い。優勝した花咲徳栄高校(埼玉県)が大阪府吹田市の平和祈念資料館を訪れたこと、準優勝の広陵高校(広島県)の選手は原爆投下の時刻に黙祷(もくとう)したこと、横浜高校(神奈川県)の増田珠(しゅう)選手は長崎出身で祖母は広島で被爆したことなど、戦争に絡めた話題に終始している。

 高校野球まで、反戦に利用したいらしい。=おわり

 ■酒井信彦(さかい・のぶひこ) 元東京大学教授。1943年、神奈川県生まれ。70年3月、東大大学院人文科学研究科修士課程修了。同年4月、東大史料編纂所に勤務し、「大日本史料」(11編・10編)の編纂に従事する一方、アジアの民族問題などを中心に研究する。2006年3月、定年退職。現在、夕刊紙や月刊誌で記事やコラムを執筆する。著書に「虐日偽善に狂う朝日新聞」(日新報道)など。