【ここがヘンだよ!日本】今、解散の「平和ボケ」 議論されない対北「朝鮮国連軍」との連携

北朝鮮の新型中距離弾道ミサイル「火星12号」(AP)

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 安倍晋三首相が言うに、今回の解散は「国難突破解散」とのことである。

 確かに、北朝鮮が、国連安全保障理事会の再三の決議を無視し、核実験を強行し、ICBM(大陸間弾道ミサイル)の開発に成功しようとしている極東情勢は「国難」と呼ぶにふさわしい。これに異論を挟む人は、そうはいないだろう。

 なればこそ、「なぜ今、解散なのか?」というシンプルな疑問が浮かぶ。衆院議員の任期は本来、来年12月までで、残り1年以上あった。安倍首相が解散の理由に挙げた消費増税の使途変更も、2019年10月以降の話で焦る必要はない。1年かけて「国難」に備えた議論をするのが政治の王道であろう。

 実際、対北朝鮮という文脈で検討しなければいけないことは多い。

 その中でも最も重要なのが「朝鮮国連軍」との連携である。朝鮮国連軍とは、1950年に勃発した朝鮮戦争における北朝鮮の進軍に対抗すべく、国連安保理決議に基づいて結成された多国籍軍である。指揮権は米国が有するが、「国連軍」を名乗ることを許された戦闘を目的とした、唯一の多国籍軍である。

 朝鮮戦争はあくまで休戦中で終わっていない。朝鮮国連軍はいまだ解散しておらず、むしろ在韓米軍は昨今の北朝鮮情勢を考えると、日米韓が連携して作戦を展開するプラットホームとして、その重要性は増している、との認識を示している。

 日本は朝鮮国連軍に参加していないが、同軍との間に地位協定を締結している。米軍横田基地(東京都)は朝鮮国連軍の後方司令部となっているほか、国内米軍7基地の利用も了承している。

 このように、日本は事実上、朝鮮戦争の当事者である。仮に、朝鮮半島で何らかの緊急事態が生じたときは、米国単独ではなく、この朝鮮国連軍が前面に出るものと思われる。自衛隊も、国連軍と連携して6万人に近い在韓邦人の保護、数十万人及ぶ在韓外国人の一時保護などの任務にあたることが想定される。

 しかし、このような作戦行動が準備されているのか、憲法9条との関係でどのように扱われるのか、国会での議論はほとんどされていない。

 日本の国連安全保障理事会の非常任理事国の任期は今年12月までだが、12月の安保理の議長国は日本であり、当事者として主導権を持って安保理外交を展開するこれ以上ないチャンスである。場合によって「朝鮮国連軍に関する新決議」や「自衛隊の参加」という選択肢もあっていいように思える。

 10・22衆院選を見据えて、自民党をはじめとする各党は公約の中で「憲法改正」を掲げていると報じられているが、本来、憲法9条の改正とは、このような具体的な論点との関係で模索されるべきだ。漠然と「自衛隊を規定する」程度のことを論点として掲げるようでは、「平和ボケ」と言われても仕方ない。

 ■宇佐美典也(うさみ・のりや) 1981年、東京都生まれ。東大経卒、経産省入省。企業立地促進政策、農商工連携政策、技術関連法制の見直しを担当後、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)で電機・IT分野の国家プロジェクトの立案やマネジメントを行う。2012年9月に経産省を退職。現在、政策コンサルタントとして活躍する。著書・共著に『肩書き捨てたら地獄だった』(中公新書ラクレ)、『朝日新聞がなくなる日』(ワニブックス)など。