【ここがヘンだよ!日本】日本経済を揺るがす通貨信認危機 行き詰まり始めた日銀「異次元緩和」

日本銀行本店

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 いわゆる日本銀行の「異次元緩和」が行き詰まり始めている。

 そもそも、「異次元緩和」とは何なのかというと、その名の通り、「インフレ率2%を目標に、金融環境をこれまでとは異次元なほどに緩和的な状態にするための政策」である。

 その主要な政策は、日銀による長期国債の買い入れだ。当初(2013年4月)は年間50兆円規模のペースで、途中(14年10月)から、年間80兆円規模で買い入れることとした。

 ただ、政府の国債を中央銀行が直接引き受けることは、財政規律の観点から原則として禁じられている。このため、実際の取引は政府が発行した国債を一時的に銀行が買い受け、それをすぐに日銀に売り、若干の利ざやを取るという形の際どい取引が行われている。

 結果として、日銀の長期国債保有残高は、13年3月の黒田東彦総裁就任時、91兆円だったが、16年12月には362兆円にまで拡大した。16年度末の日本の長期国債の発行残高は845兆円なので、この時点で40%以上の長期国債を日銀が保有していたことになる。

 このまま年間60兆~80兆円のペースで金融緩和が進めば、7~10年後にはすべての国債を日銀が保有する計算になる。

 では、異次元緩和の結果はどうだったのか。

 円安をもたらし、企業収益を押し上げたが、当初目標のインフレ率2%の達成はできていない。その見込みも立っていない。こうした状況を踏まえると、異次元緩和は、単純に「日銀がお金を刷りまくって、国債を大量に購入する活動で、近い将来日銀が、ほぼすべての国債を保有することになることが見込まれる」と理解すべきだ。

 はっきり言って、ここまで膨らんだ政府の債務を償還することは不可能である。また、その必要性も必ずしもない。おそらく、政府の債務は異次元緩和の結果、その大半が日銀に移動し、そのまま日銀の管理のもとで大半は借り換えを繰り返し、塩漬けされる。

 だが、ここまで日銀の資産規模が膨らむと、長期国債のわずかな金利上昇でも日銀の財務体質が大きく傷つけられる。日銀の推計では、16年9月時点でも、1%の長期金利上昇が起きれば時価で23兆8000億円規模の資産の評価損が生じるとされている。

 仮に、これが現実になれば、結果として日銀が発行する「円」という通貨の信認が揺らぐことになりかねない。つまり、近い将来、政府に対して、国債の低金利を維持するための強力な財政再建の圧力がかかることが見込まれるのだ。

 逆に言えば、それまでに日本政府が何らかの形で「財政再建の形」を示せていなければ、通貨の信認が疑われかねず、日本経済は根本から揺らぐことになる。これは遠い未来ではなく、ほんの7~10年後の話である。

 静かに、そして確実に、日本経済の正念場は近づいている。=おわり(政策コンサルタント・宇佐美典也)