【習独裁の幕開け】政治的恩師、威容支えた101歳2人の長老 江沢民一派粛清の達成感を共有

共産党大会に出席した101歳の宋平・元政治局常務委員(共同)

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 習近平国家主席の“威容”ばかりが目立った第19回中国共産党大会だが、日本のメディアがノーマークの長老たちも、さまざまな思いで大会に臨んでいたはずだ。そして“陰の主役”は間違いなく、出席者で最高齢の宋平・元政治局常務委員である。宋氏は101歳、第1回中国共産党大会が開催される4年前の、1917年(中華民国6年)に生まれた。

 習氏の亡き父、習仲勲元副首相との関係が密接で、胡錦濤氏に共産主義青年団の幹部育成プログラムへの参加を薦め、上へ上へと引き上げてきたとされる政治恩師でもある。さらに宋氏、胡氏、習氏の3人は、清華大学が母校という共通点もある。

 実のところ、習政権が発足後、再び活動を活発化させていた宋氏に中国メディアからの注目は高まっていた。

 昨年10月、6中全会(中国共産党第18回中央委員会第6回全体会議)の直前、宋氏が清華大学に姿を現した際にも、「習氏の政治的な立場を支持しているサイン」などと報じられた。中国の一部メディアから、「胡・習連盟の流れが加速している」との記述が見られるようにもなったが、その背景には宋氏の存在があったのだ。

 温家宝前首相にとっても、宋氏は政治的恩師とされる。この度の党大会では席を横に並べ、杖を突く宋氏が座る際には、介助要員2人が傍にいるにも関わらず、75歳の温氏自らが立ち上がり、手助けする様子をカメラが子細にとらえていた。

 今から15年前の第16回共産党大会は、宋氏のまな弟子の胡政権が発足し、温氏も序列3位に昇格した時期だった。ところが、宋氏は大会への出席を拒絶したとされる。最高指導部とそれに続く人事は、表向きは世代交代が進んだが、親族を含む江沢民派が大多数を占めていた。中央軍事委員会主席の座も手放そうとせず、党や軍をいよいよ私物化する江氏に、9歳上の先輩として我慢ならなかったのだろう。

 そしてもう1人、宋氏と同じ101歳の長老、李鋭氏についても近年、動向が時々報じられていた。

 中国共産党史専門家の李氏は、元中央委員で党中央組織部の常務副部長などを務め、毛沢東氏の秘書も兼務したことがある。宋氏と同様、習一族とも関係が深く、前回の第18回党大会の際に、李氏は江氏を猛烈に非難した長老の1人とされる。

 この2人の大長老「宋・李」両氏は、中華人民共和国の建国に携わった第1世代を袖にしてきた、「儒教精神のカケラもない」江氏への嫌悪感と、汚職三昧で腐敗しきった江沢民一派への粛清に臨んだ習政権に対する、ある程度の達成感を共有していると推測する。

 だが、毛沢東にも仕えた経験がある李氏の方は「脚が痛いから」と、党大会への出席を見送った。「中国に民主が不足している」ことを危惧していた李氏。習独裁への道に、脚の痛みより違和感を覚えていたからかもしれない。 =おわり

 ■河添恵子(かわそえ・けいこ) ノンフィクション作家。1963年、千葉県生まれ。名古屋市立女子短期大学卒業後、86年より北京外国語学院、遼寧師範大学へ留学。著書・共著に『豹変した中国人がアメリカをボロボロにした』(産経新聞出版)、『「歴史戦」はオンナの闘い』(PHP研究所)、『トランプが中国の夢を終わらせる』(ワニブックス)、『中国・中国人の品性』(ワック)など。