【新・日米同盟の時代】メディアが書き立てる「トランプ氏VSバノン氏」の大間違い 上院補欠予備選「保守派」勝利のウラ

トランプ大統領(写真)と、ホワイトハウスを去ったバノン氏。2人の真の関係とは…(AP)

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 日本では、米大手メディアを引用して、ドナルド・トランプ政権が今にも崩壊すると言わんばかりの報道が目につく。共和党内の反トランプ陣営が反乱を起こし、政権内でも分裂が進み、「ロシアゲート」問題で大統領自身が弾劾に追い込まれる-という筋立てだ。

 「ロシアゲート」問題を捜査するモラー特別検察官は10月30日、トランプ陣営のポール・マナフォート元選対本部長らの起訴を発表した。米国に対する謀略や約1800万ドル(約20億円)以上のマネーロンダリング(資金洗浄)などの12の罪状という。

 これに対し、トランプ大統領は「陣営に参加する何年も前の話だ。共謀もない!」「『トランプ陣営とロシアの結託』など存在しない」など、問題を否定するツイートをしている。

 議会の抵抗で、トランプ氏が実行したい「大幅減税」や「オバマケア改革」「各種の規制緩和」は思うようにならない。ただ、トランプ氏の経済政策の方向性を経済界が歓迎していることは、最高値を更新する米株価を見れば明らかである。

 日本でも衆院選中に、株価は16日間連騰の新記録を作った。安倍晋三政権の基本的方向性が正しく、日本国民がそれを歓迎しており、選挙での自民党圧勝が確実だったからである。

 日本のマスコミは、これらを無視している。国民は安倍政権を大いに支持したのである。

 トランプ氏の懐刀といわれたスティーブ・バノン首席戦略官が辞任したのが8月18日だ。これ以降、米大手メディアはトランプ氏とバノン氏の対立を書き立てているが、大間違いだ。

 バノン氏は「ホワイトハウスにいたのでは、自らの力が発揮できない」と悟り、草の根レベルで真のトランプ支持者を増やそうと、あえて野に下ったのだ。辞任直後、バノン氏は「トランプ大統領のために、新たな戦いを始める」と宣言した。

 9月26日、アラバマ州の上院補欠選挙の共和党予備選で、トランプ氏が支援したルーサー・ストレンジ暫定上院議員が敗北し、バノン氏が推すロイ・ムーア前同州最高裁首席判事が勝利した。トランプ氏は共和党エスタブリッシュメントの圧力で、表向き、ストレンジ支持を打ち出したが、実は、意中の人物は保守派のムーア氏であったといわれている。

 ストレンジ氏の最大の支持者は、ミッチ・マコーネル共和党院内総務だ。マコーネル氏は、ボブ・コーカー上院外交委員長と並び、トランプ氏と対立する共和党議員である。バノン氏は、マコーネル、コーカー両氏ら共和党エスタブリッシュメントをたたき落とし、トランプ氏支持の上院議員を当選させることが使命だと公言している。

 大統領といえども独裁者ではなく、さまざまな妥協を強いられる。

 共和党エスタブリッシュメントには、「保守」と言いながら「グローバリスト」が多く、トランプ氏が進めたい政策を妨害している。バノン氏はこういったトランプ氏の政敵と戦っているのだ。

 来年の中間選挙では、トランプ氏を支持する新人の共和党議員が大量に当選するだろう。

 ■藤井厳喜(ふじい・げんき) 国際政治学者。1952年、東京都生まれ。早大政経学部卒業後、米ハーバード大学大学院で政治学博士課程を修了。ハーバード大学国際問題研究所・日米関係プログラム研究員などを経て帰国。テレビやラジオで活躍する一方、銀行や証券会社の顧問、明治大学などで教鞭をとる。現在、拓殖大学客員教授。著書・共著に『韓国は日米に見捨てられ、北朝鮮と中国はジリ貧』(海竜社)、『希望の日米新同盟と絶望の中朝同盟』(徳間書店)など。