【新・悪韓論】外交を動かすのはジェイン氏でなくジョンイン氏 約束遵守の思考なし、考え方は双生児

文大統領(写真)の外交・安保政策は、文正仁補佐官が動かしているようだ(AP)

 韓国で「大統領の側近」と言えば、どの政権下でも「絶対に偉い人」だ。その人の言うことに逆らったらひどいめに遭う。盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領の下、鳴り物入りで発足した大統領諮問機関「東アジア時代委員会」の委員長は、まさに「絶対に偉い人」だった。彼は、ある開発会社を優遇するよう道路公社に圧力をかけた容疑で起訴された。その人物がいま、文在寅(ムン・ジェイン)政権で「飛ぶ鳥を落とす」勢いの、統一・外交・安保特別補佐官になっている。

 文正仁(ムン・ジョンイン)氏という。文大統領とは、韓国語の発音をカタカナ表記すれば「ジェ」と「ジョン」の違いだけ。紛らわしいが、外交・安保に関する限り、2人の考え方、発想の仕方は双生児のようだ。韓国人記者の間では「大統領が公式には言えない本音を代弁する人物」と見なされている。

 6月の米韓首脳会談の直前、正仁氏は「北朝鮮が核とミサイルの開発を中断すれば、韓米合同軍事演習と米軍の戦略兵器を縮小できるというのが大統領の考えだ」「北朝鮮が非核化に応じなければ対話をしないという米国の考えは受け入れられない」と述べた。

 しかし、6月の米韓首脳会談では、両国が一致して北朝鮮を圧迫することで合意した。「ジョンインの言う通りにならなかった」と思っていたら、文政権は7月17日、北朝鮮に軍事会談と赤十字会談を提案して、米国を怒らせた(=もっとも提案自体は北朝鮮に無視されたが)。

 11月の米韓首脳会談。ドナルド・トランプ米大統領が韓国を飛び立つや、正仁氏は対中「三不」約束について、「快く受け入れられる」と語った。

 「三不」とは、(1)高高度ミサイル防衛網(THAAD)を追加配備しない(2)米国のミサイル防衛(MD)システムに参加しない(3)韓米日3カ国の軍事同盟に発展させない。中国の要求どおりの内容だ。

 「南北関係がうまく解決すれば、韓米同盟にこだわる理由がない」とも述べた。

 すると、ジョンイン=ジェインの心を忖度(そんたく)したのか。韓国大統領府の経済補佐官が唐突に記者会見して、首脳会談の記者発表文の最初に書かれている「インド・太平洋構想」について、「韓国は加わる必要がない」と述べた(=なぜ、担当の違う補佐官が出てきたのかは不明)。

 記者発表文の配布から17時間後だった。韓国との約束は24時間ももたなかったのだ。

 さらに韓国は、予定されていた日米韓3カ国合同軍事演習にもケチを付け、「3カ国合同」ではなく「日米」と「米韓」が別途にする演習にさせた。「三不」の(3)だ。

 まさに、「韓国の外交・安保政策は、ジェインではなくジョンインが言う通りに動いている」(韓国人ジャーナリスト)。そこに「約束は守らなくてはならない」という思考はない。

 冒頭に述べた起訴は「道路公社に個人の意見を述べただけ」という珍判断で無罪になった。その開発会社には息子が就職している。その息子は、早々と韓国籍を放棄して米国籍になり、韓国での兵役を逃れていた。滅びゆく国では「よくあること」だ。

 ■室谷克実(むろたに・かつみ) 1949年、東京都生まれ。慶応大学法学部卒。時事通信入社、政治部記者、ソウル特派員、「時事解説」編集長、外交知識普及会常務理事などを経て、評論活動に。主な著書に「韓国人の経済学」(ダイヤモンド社)、「悪韓論」(新潮新書)、「呆韓論」(産経新聞出版)、「ディス・イズ・コリア」(同)などがある。