【北朝鮮危機】第2次朝鮮戦争は短期決戦、米軍が取る作戦全貌 文大統領が決断できるかに不安も

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 第2次朝鮮戦争が勃発すれば、米軍は早期に作戦目的を達成する「短期作戦」(=望ましいのは数日間の作戦)を目指すだろう。作戦が長引くと、韓国(特にソウル)や日本が受ける被害が増大するからだ。

 短期作戦では、攻撃開始直後から、弾道ミサイルや巡航ミサイルなどの精密誘導兵器や、航空攻撃による大量打撃が主体になる。地下施設や坑道を破壊するバンカーバスターや、爆風で敵を殲滅(せんめつ)する気化爆弾など、あらゆる手段を駆使して、重要目標の破壊を目指すだろう。

 重要目標とは、「C4ISR(指揮・統制・通信・情報・監視・偵察)機能」や、「ミサイル関連施設」「核兵器関連施設」「対空組織」などだ。金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長などへの「斬首作戦」は、指揮・統制機能の破壊の一部となる。

 作戦開始前や、作戦期間を通じて実施されるサイバー戦や電子戦は必須の作戦であり、指揮・統制機能や対空機能を無効化することになる。

 そして、何より重要な要素は、地上戦力(=米陸軍と米海兵隊、韓国陸軍)の投入だ。

 北朝鮮への攻撃を、精密誘導兵器と航空攻撃のみで終了させるというのは甘い考えだ。地上戦力の投入は不可欠で、ジェームズ・マティス米国防長官は、作戦における地上戦力の重要性を熟知している。

 地上戦力とマティス氏に関するエピソードを紹介する。

 イラク戦争で、精密誘導兵器と航空攻撃の威力を根拠にした「効果に基づく作戦」(EBO=Effects-Based Operations)があった。主に精密誘導兵器と航空攻撃で、迅速かつ効率的に目標を達成しようとする作戦で、地上戦力の使用を軽視した作戦だった。

 当時、統合戦力軍の司令官だったマティス氏は、EBOを徹底的に批判した。なぜなら、EBOに基づいた米軍の作戦やイスラエル軍の作戦が失敗の連続だったからだ。

 結論として、作戦は統合作戦で実施すべきで、精密誘導兵器と航空攻撃のみに頼っていては作戦は失敗する。地上戦力による情報収集、火力の誘導、敵の撃破、目標の奪取が不可欠だということだ。

 ちなみに、第2次朝鮮戦争において、韓国陸軍の38度線を越えた作戦は不可欠だが、文在寅(ムン・ジェイン)大統領が決断できるかどうか、不安ではある。

 以上の説明で明らかなように、一部の戦力による「斬首作戦」などの限定目標の作戦のみを実施することは、極めてリスクが大きい。私であれば採用しない。膨大な陸・海・空軍の戦力を集中した「激烈短期作戦」にならざるを得ないと思う。

 ■渡部悦和(わたなべ・よしかず) 元陸上自衛隊東部方面総監、元ハーバード大学アジアセンター・シニアフェロー。1955年、愛媛県生まれ。78年東京大学卒業後、陸上自衛隊に入隊。その後、外務省安全保障課出向、ドイツ連邦軍指揮幕僚大学留学、第28普通科連隊長(函館)、防衛研究所副所長、陸上幕僚監部装備部長、第2師団長、陸上幕僚副長を経て2011年に東部方面総監。13年退職。著書に『米中戦争そのとき日本は』(講談社現代新書)など。